プロパンガス・都市ガス供給の仕組み

プロパンガスと都市ガスは成分だけでなく、供給の仕組みにも大きな違いがあります。プロパン、都市ガスともに生活に欠かせないエネルギーであるため、少しでもお得に利用できるようにきちんとした知識を身に着けましょう!今回は供給形態の比較をまとめました!

​プロパンガス・都市ガス供給の仕組み

2017年4月、都市ガスが完全自由化となりました。ネットやテレビでは新たにお得なプランや電気との抱き合わせプランなどなど、他業種まで入り乱れて顧客の獲得合戦が繰り広げられています。どのガス会社やどのプラン、どのサービスを選んでよいかわからないぐらいですね。

一方でプロパンガスはすでに自由化市場となっているので、2017年の自由化の対象は「都市ガス」でした。いろいろなプランを比較したり検討したりしていると、

そもそもプロパンガスと都市ガスってどのような違いがあるの?

という疑問もわいてくる方がいらっしゃるかもしれません。

プロパンガスと都市ガスにはさまざまな違いがありますが、知っているようであまり知らない供給方法の違いについて比較&ご紹介します!ぜひ参考にしてください!

​供給方法比較

プロパンガスと都市ガスの供給方法には大きな違いがあります!ご家庭に届くまでの流れをみてみましょう。

比較「供給の流れ」

【プロパンガス】供給の流れ
  1. 産油国で作ったプロパンガスを液化しタンカーで1次基地に運ぶ
    国内で作られたプロパンガスも液体化し1次基地に運ぶ
  2. 1次基地に貯蔵されたガスを常温にして2次基地に運ぶ
  3. 2次基地でタンクローリーに移し替える
  4. 全国各地にある3次基地へと運ばれる
  5. 3次基地でボンベに充填し各家庭へ
【都市ガス】供給の流れ
  1. 産油国で分離・回収したガスを液体化し専用タンカーでLNGタンクへ運ぶ
  2. タンクにある液化したガスを気化させ臭いを付ける
  3. ガスホルダーへ貯蔵する
  4. 調圧し低圧導管を通って各家庭へ

いかがでしょうか。

供給方法の最大の違いは、ボンベでの供給と導管による違いです。プロパンガスはボンベへ充填して家庭に運ばれてきます。一方、都市ガスは導管と呼ばれる、地下に巡っている配管を通って各家庭に運ばれます。
上記表で示した通り、原材料や成分、生成方法にももちろん違いはあります。
また、プロパンガスと都市ガスともに、海外で生産されたものだけでなく、量は少ないですが、日本国内でも作られています。

MEMO
プロパンガス(LPガス)その特性上ボンベに充填し供給される【分散型供給】です。
都市ガスは導管を通して供給される【系統供給】となっています。

ボンベと導管での供給になるので大きな違いがありますね!

ではなぜ供給方法に違いがあるのでしょうか。

違いの理由

ボンベと導管という違いがある最大の理由は、ガスの特性にあると考えられます。プロパンガスの主な成分はプロパンやブタンですが、都市ガスの主な成分はメタンです。そもそも性質の違うガスであり、特性も大きく異なっています。

LPガスのプロパンは都市ガスのメタンよりも液化しやすくボンベでの運搬が可能となります。メタンは液化しずらくボンベでの運搬には向かないガスと言えるでしょう。

​輸入のためのタンカーの違い

プロパンガスと都市ガスの供給方法の主だった違いを確認しました。続いては、輸入に関しての違いです。産油国つまり外国で生産されたガスをどのように日本へ運んでくるのでしょうか。
また、運ぶ過程でどのような違いがあるのかみていきましょう!

LPGの場合

プロパンガス、都市ガスともにその多くを輸入に頼っています。海外で生産されたガスはタンカーによって運ばれてきます。そのタンカーにも大きな違いがあります。

LPGタンカー

LPGタンカー

上記タンカーはLPG船とよばれ海外で生産されたブタン・プロパンを日本へ運ぶタンカーです。このLPGタンカーはとても大型で200,000m3を超える船もあります。

プロパンやブタンなどを液化したLPG(液化石油ガス)を運ぶ。輸送方式には常温で加圧して液化する加圧式、常圧で冷却して液化する冷却式及び半冷加圧式があるが、大型LPG船はすべて冷却式。輸送中に気化したガスを液化する再液化装置も備えている。
参考

船のいろいろ - 日本船主協会JSA 一般社団法人日本船主協会

貯蔵して輸送するだけでなく、再液化させる装置も備わっていますね。再液化装置は、航行中の圧力管理や、LPGの温度調節などに利用されています。

一方、都市ガスはどうでしょうか。

LNGの場合

都市ガスもプロパンガスと同じく、海外で生産され液化した状態でLNGタンカーに充填され日本へ運ばれてきます。

LNGタンカー

LNGタンカー

上記がLNGタンカーです。LPGタンカーと違って丸い構造物が目を引きますね。日本の港でよくみかける丸いタンクと同じ感じがします。

天然ガスをマイナス162℃の超低温で液化したLNG(液化天然ガス)を運ぶ。超低温輸送のための特殊な材質のタンク、荷役時の事故を防ぐ緊急遮断装置、輸送中に気化した天然ガスを燃料として使うタービンエンジンなど、先端技術を駆使したハイテク船。船価が高いため、特定の天然ガス輸入プロジェクトの専用船として建造されることが多い。
参考

船のいろいろ - 日本船主協会JSA 一般社団法人日本船主協会

プロパンガスよりも液化温度が圧倒的に低く、圧力も多くかかっているのでとてもハイテクな船となっているようです。ハイテクタンカーです。上記説明にもあるように、とても高価な船なので専用船として作られています。

なるほど、供給だけでなく輸入方法も大きく違っているんですね!ガスタンカーと言えばだいたいすべて同じ構造かと思っていましたが、ずいぶん違いがあるなと思ってしまいます。

プロパンガスと都市ガスは、成分や輸入するタンカー、供給方法が違えば生産方法だって違うはずです笑。

​プロパンガス・都市ガス生産方法

プロパンガス、都市ガスともに国内で使用しているガスエネルギーの多くを輸入にたよっています。2つのガスの回収方法をみてみましょう!

プロパンガス(LPG)回収プロセス

油田の内部に滞留しているガスから分離・回収

天然ガスから分離・回収

原油の精製過程で分離

プロパンガスは原料となるプロパンやブタンだけでなく、別の物質や不純物も多く含まれるため地上に移動したあと分離・回収作業を行います。そして生成されたものが製品として輸出されていきます。

近年は、上記3つの方法だけでなくシェール層から回収するプロパンガスも急増しています。

シェールガスとは
頁岩(シェール)層から採取される天然ガス。多くは深さ 1500m以上の場所に賦存する。頁岩は,数億年前に海底や干潟に堆積した有機物に富む泥土で,シルトや粘土の細かい粒子からなる堆積岩である。長い年月の間に泥土層はさらなる堆積物によって深く埋没し,泥土は熱と圧力の作用で頁岩に変成し,有機物は天然ガスとなった。
参考

シェールガスコトバンク

都市ガス(LNG)回収プロセス

ガス田から直接産出する「構造性ガス」

油田や原油と一緒に産出する「随伴ガス」

石炭鉱から産出する「炭鉱ガス」

メタン(CH4)を主成分(80~100vol%)とする天然ガスを地下から取り出し、脱硫、脱炭酸、脱湿等の前処理を行います。さらにそのガスを超低温に冷却し液化したものを液化天然ガス(LNG)と呼びます。そのLNGを上記で示したLNGタンカーで日本へ運んでくるのです。

​プロパンガスと都市ガスの供給の仕組みを詳しく!

供給方法や生産方法の違いをみてきました。プロパンガスも都市ガスも大きく異なっていることがお分かりいただけたでしょうか。その違いをもう少し詳しくみてみましょう。それぞれの供給の流れです。

まずはプロパンガスの供給の流れです。

​① 産ガス国や産油国〜日本国内へ

中東などの産油国・産ガス国で生産されたプロパンガスは産ガス国や産油国で液体にされ専用のタンカーで日本国内へ運ばれてきます。

上記で説明したLPG専用のタンカーで運ばれてきた液体のガスは、まず一次基地へ貯蔵されます。一次基地は輸入基地とも呼ばれ、海外から送られてくるガスを貯蔵しています。

  • 日本全国35ヶ所
  • 約150万リットル貯蔵

一次基地で貯蔵されたプロパンガスはその後小型タンカーやタンクローリーに移し全国にある二次基地へと運ばれていきます。

​② 一次基地から二次基地へ

一次基地にある輸入されたLPGや国内で生産・貯蔵されたLPGを常温に戻してから二次基地へと運びます。二次基地は各地に点在している充填所までの中継基地として機能していて、全国に60ヶ所ほどあります。

  • 高圧タンカーからの受け入れ機能
  • 受け入れたガスの貯蔵
  • 貯蔵されたガスをタンクローリーなどへ充填する機能
  • プロパン7万トン
  • ブタン5万トン
  • 合計12万トンを貯蔵

​③ 三次基地(充填所)へ

中継所である二次基地で受け入れ、タンクローリーなどに詰めて充填所へ運びます。充填所とはプロパンガスをボンベに詰める機能を有していて、全国に約2200ヶ所ほどあり、そのうち340ヶ所は中核充填所となっています。中核充填所には非常用電源や緊急用の通信設備が整備されていて、万が一の事態に備えています。

また、ボンベに充填して供給する以外にもバルク供給と呼ばれる方法があります。バルク供給とは、企業や工場など大口の顧客へ向けてのサービスでしたが、1997年(平成9年)の法改正により、小口のお客様(需要家)への供給も可能になりました。このことにより、供給の安定化や合理化によって料金が安くなるなどのメリットがあります。

④ 充填所からご家庭へ

プロパンガスは三次基地の充填所でボンベへ充填され、各家庭へ運ばれていきます。ここまできてようやくわたしたちが利用できる、普段よく目にするプロパンガスになってやってきます。

プロパンガスを利用しているご家庭には、プロパンガスを供給する設備が設置されています。

生活に欠かすことのできないプロパンガスは、上記のような流れを経てわれわれの家庭で使われています。

都市ガスが家庭に届くまで

【都市ガス】液化天然ガスの供給の流れ
  1. 産油国で分離・回収したガスを液体化し専用タンカーでLNGタンクへ運ぶ
  2. タンクにある液化したガスを気化させ臭いを付ける
  3. ガスホルダーへ貯蔵する
  4. 調圧し低圧導管を通って各家庭へ

​① 海外で回収〜日本国内へ

オーストラリアなどの産油国で分離・回収された天然ガスは液体化されタンカーで日本へ運ばれて来ます。液化天然ガス専用のタンカーで、大きいものでは積載容量26万立方メートル級の大型LNG船も存在しています。

そのタンカーで運ばれた液化天然ガス(LNG)は日本にある一次基地のLNGタンクで貯蔵されます。LNGタンクは、約−160℃で液化した天然ガスを冷温貯蔵しておく大きなタンクです。

​② LNGタンク〜気化・着臭

LNGタンクへ貯蔵された液化天然ガスを気化させ、臭いをつけます。LNGはもともと無臭です。みなさんが普段嗅いでいるガスの少し不快な臭いはあとからつけているのです。理由はもちろん、ガス漏れがすぐにわかるようにです。臭いがなければ漏れたとしても気づかずとても危険です。そのため、人工的に着臭しているのです。これは『ガス事業法』で定められた決まりごととなっています。

​③ ガスホルダーへ貯蔵

気化・着臭された天然ガスはこの時点でようやく都市ガスとなります。製造された都市ガスを貯蔵することによって、安定的に供給できるようにするために都市ガスとなったガスはガスホルダーへ貯蔵されます。

ガスの使用量は時間によって違いがあります。使う分だけ作っていたのでは足りなくなったり余ったりしてしまいます。そのようなことを防ぐためにもガスホルダーへ貯蔵しておくのです。ガスホルダーは貯金箱のようなものですね。電気と違い貯めておくことが可能です。

④ いよいよご家庭へ

都市ガスは地下に張り巡らされた導管とよばれるパイプを通って家庭に届きます。導管は本管、供給管、内管に分かれていて、さらにガスの圧力によって、高圧管、中圧管、低圧管に分けられます。

導管【流れるガスの圧力が1cm2あたり】

10kg以上 ⇒ 高圧管

1~10kg未満 ⇒ 中圧管

1kg未満 ⇒ 低圧管

まとめ

プロパンガスが届くまでのプロセスをみてきました。それぞれの工程にはそれぞれ最新の技術や事故などを経験し修練していった技術など含まれています。また、プロパンガスをお得に賢く選択するためにも、もっと深く知識を深めていきましょう!

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