プロパンガスの値上げ理由を徹底解説!【2023年6月 最新】

プロパンガスの決定方法から値上げ理由まで解説!

1.プロパンガスが値上げされる主な原因

プロパンガスの値段は、いろいろな要因が複雑に絡んでガス会社から請求される料金になっています。 この記事では、プロパンガスの値段が決まるまでの経緯や、値上げにつながる要因などを解説していきたいと思います。

原油価格が高騰している理由【2022年度3月最新】

(1)原油価格の高騰

プロパンガスの価格を決める1つに、原油価格が大きく影響しています。 ニュースでも取り上げられるような原油価格の高騰があると、プロパンガス料金等の値上げにつながってしまいます。 図1は、原油単価の推移です。

参考

石油連盟情報ライブラリー

※図1~3は、2021年1年間のデータが平均値しかなかったため、2021年の平均値1点のみを入れています。

(2)為替レートの変動

為替レートの変動により、プロパンガスの価格も変動していきます。
1ドルが100円(円高)と130円(円安)では、輸入額に大きな差となって現れます。

例えば、ジュースを1万本仕入れていた場合、1ドル100円なら合計100万円です。
1ドル130円になると130万円になってしまいます。

図2は、為替相場の変化様子です。

参考

日本銀行時系列統計データ主要時系列統計データ表

(3)需要と供給のバランス

原油価格は例年を通し、需要が増える冬にかけて値上げされ、夏は下がる傾向にあります。また、昨今はEU圏にロシアからエネルギーが入らないため、極端にエネルギー不足です。このような状態が、供給が下がり需要は高いということになります。

図3では、過去3年間のプロパンガス価格の動きを表しています。
2022年はコロナや世界情勢の影響で激しく変動していました。2022年末ごろからプロパンガス価格は落ち着いてきたことが見て取れますが、2021年に比べるとまだ高い状況が続いています。
プロパンガスの価格を決める要因は、どれをとっても私たちガスの使用者にはどうすることもできないものばかりです。その影響は大きく、プロパンガス料金の値上げだけではなく、他の生活物資の価格も大きく変動してしまいます。

参考

石油連盟情報ライブラリー

2.プロパンガス料金はどうやって決まる?

ここからは、プロパンガスの値段がどのようにして決まっているのかについて解説していきます。

(1)サウジアラムコ社

原油の輸入時の契約は、プロパンガスと合わせてサウジアラビア国が行うのではなく、サウジの国営石油会社、サウジアラムコ社が全権を持って契約に当たります。契約交渉といっても価格交渉はほとんどなく、通告価格で契約します。
価格の設定は毎月ごとに行われます。

日本の原油の輸入相手は、サウジアラビアを中心とした中東勢でした。
プロパンガスも原油と共存状態にあるため、原油の多いサウジアラビアがプロパンガスでも日本への輸出国として第1位でした。

2019年頃から原油の産出国の様相が変わりました。その理由は、米国を中心にシェールオイルの産出が盛んとなったためです。
原油の産出国、2019年のベスト5は、
北米(26%)―ロシア(21%)-中東(20%)-アジア太平洋(10%)-アフリカ(9%) となります。

その結果、プロパンガスの日本への輸出量の多い国が変わり、2019年のベスト5は、北米(30%)―アジア太平洋(25%)-中東(20%)-ロシア(15%)-アフリカ(5%)となって、米国を中心とした北米系が多くなっています。
米国は、産油では1、2位を争う位置ですが、自国で使用して、原油の輸出はあまり行っていません。

(2)モントベルビュー市況

アメリカのプロパンガス価格は、テキサス州のモントベルビュー市況で決まります。
テキサス州モントベルビュー市のプロパンガス基地におけるプロパン取引価格が決まるのは、米国のプロパンガスはパイプラインでテキサス州に集まってくるためです。

サウジアラビアがプロパンガスの価格を決めるという時代は、2015年頃までは続いていました。しかしアメリカがシェールオイルから原油を自国で供給することで、原油とプロパンガスの供給のバランスが崩れました。
アメリカがプロパンガスの輸出を始めると、2015年頃までは中東勢の輸出量が上回っていましたが、2019年には逆転して、アメリカやカナダなどの輸出量が増えています。ただし、これはプロパンガスに限ったことで原油では、アメリカは原油の輸出にはほとんど踏み切りませんでした。

こうしてプロパンガスの契約金額は、アメリカの意向をくみ取って中東と調整をして価格が決められるようになっています。
なお、アメリカも契約交渉にはモントベルビュー市況が色濃く絡んでいます。

図4-1、図4-2から、プロパンガスの日本への輸入量が中東からの輸入に比べ、アメリカ・カナダ・オーストラリアが大きく輸入量を伸ばしていることが分かります。
さらに、2022年には、アメリカ・カナダ・オーストラリアからの輸入量が90%を超えていることが分かります。

ただし2022年の秋から2023年にかけては、EU諸国にロシアからのエネルギー供給が途絶え、幅広くエネルギーを集め備蓄に奔走している時期です。
中東からの原油やプロパンガスの多くがEUに流れていることで、図4-1,4-2のようなグラフになっている可能性があります。

参考

資源エネルギー庁【第213-1-17】プロパンガスの輸入先(2019年度)

参考

日本プロパンガス協会2022年度 CIF価格 貿易統計

(3)プロパンガスの調達価格

私たちに請求されるプロパンガスの価格が、どのように決まるのか順を追って見ていきましょう。

図5は、プロパンガスの産油国から、ガス供給会社がそれぞれ産油国と契約を締結し、タンカーによって日本まで輸送、上陸後に卸売業者・小売業者から一般家庭にプロパンガスが運ばれる体系図です。

図6は、プロパンガスが産油国から運ばれ一般家庭に届けられるまでに、どのようなコストが原油価格に加えられるのかを流通経路とともに紹介します。

  • ➀ FOB価格
    産油国と輸入契約後に、ガス輸入会社には、タンカーにプロパンガスを積み込むまでのコストが掛けられます。
  • ② CIF価格
    CIF価格は、ガスの契約金額にタンカー費用と保険費用を加えた価格です。
    ガス輸入会社は、産油国から受け取ったガスを普通の船で運ぶことはできませんから、専用のタンカーの手配が必要です。 さらに、日本までの航路上で何があっても良いように、保険を掛けることが必要です。 必要というより必須です。運送会社は保険がなければ輸送を拒否するそうです。
  • ③ 卸売価格
    卸売価格は、CIF価格に、タンカーから下ろして貯蔵し、販売業者まで運搬するまでの価格を加えたコストとなります。
    日本まで運んだプロパンガスは、卸売業者に引き渡されます。卸売業者は、タンカーからガスを貯蔵施設に貯蔵し、必要とあれば内船も手配して港から港へと運ぶルートや、タンクローリー車などで陸路を販売所まで運び、卸売価格に反映されます。
  • ④ 販売価格
    プロパンガス販売業者は、卸売業者からタンクローリーなどで販売場の貯蔵タンクなどに貯蔵します。貯蔵したプロパンガスをボンベに入れて販売することになります。

ローリーから貯蔵タンクへ貯蔵する費用、ボンベに積み替える費用、販売場内の保安・維持のための費用、ボンベを一般家庭に運ぶまでの費用などのコストが加えられて、販売価格となります。

一般家庭のユーザーは、この販売価格でプロパンガス料金を支払うことになります。
なお、図6では小売価格としていますが、販売価格と同じ意味です。

(4)プロパンガス価格の構成

図7では、図6のプロパンガスの価格構成について、それぞれが占める割合を紹介します。
前提として、産油国からプロパンガスを受け取って、工場や一般家庭に運び込まれるまでに掛かるコスト(流通価格)は常に同じとします。

図7は、小売価格(私たちユーザーが支払うガス料金)を100%として、FOB価格、CIF価格、卸売価格の割合を示しています。赤の点線で囲んだ部分は、その価格の構成が何%を占めるのかが分かるようにしたものです。

FOB価格が14.5% CIF価格が1.0% 卸売価格が20.3% 小売価格が64.2%

プロパンガスが20m3当たり、10,000円の小売価格(消費者の払う料金)の場合 1,450円がプロパンガスの契約価格(FOB)という事になります。

プロパンガスが値上げする原因の1つに、原油価格の値上げを挙げていますが、原油価格が高騰するという事は、プロパンガスの輸入額が上がってしまうということです。原油価格の値上は、プロパンガス価格の値上げにつながるだけではなく、原油の値上げで世界市場の相場が動くことにも影響を及ぼしています。

以下の図は、原油価格の値上げに関して、プロパンガスの流通価格と、小売価格を紹介します。図のFOB価格は、プロパンガスの輸入契約価格ですが、プロパンガスと原油価格はほぼ連動しますので、FOB価格を原油価格と想定しても良いでしょう。 ※2018年から2023年3月までのデータです。 プロパンガスの取引価格に応じた、FOB価格~卸売価格(左軸)+小売価格(右軸)となっています。

参考

日本プロパンガス協会2022年度 CIF価格 貿易統計

(5)原油価格と市場相場

原油価格の上下と市場の相場の上下は、連動します。
原油が上下すれば、原油を基に物が作られているわけですから、市場が動くことになります。逆に、市場の上下によって原油の価格も変化します。
市場の変化とは、好景気か不景気かということになりますが、不景気であれば原油が売れなくなる恐れから産油国は減産します。少ない原油を皆が欲しがることから、原油の価格は上がると予想されます。
また逆に好景気で原油の需要が多くなるという市況相場の予想がつけば、原油の増産を図ります。産油国は1,2国だけではありませんから、少しでも多く原油を売るためには、原油価格を多少値下げし購買意欲を操作されるなど、原油価格と市場相場は連動して動きます。

今回の原油の高騰で分かったことは、ガソリンが毎週上がる、物価が次々と値上げされるなど、プロパンガスも含め、日常必要とする生活物資に影響するということです。

(6)市場相場と世界情勢

2021年後半から原油価格の高騰が始まりました。
コロナの流行によって、人が動けず、物が作れない、売れないという市況の大混乱が世界的に起こり、それに伴い原油の減産へとつながりました。
2022年には、ロシアのウクライナへの侵略戦争も始まり、この戦争によって、EUは団結してロシアに制裁を加え、EUはロシアからのエネルギー資源の供給停止という大きな問題へと発展しました。そのためEUは、エネルギー資源の確保のため、産油国やアメリカに対し、エネルギー資源の確保に奔走しました。

このように、コロナやロシア・ウクライナの侵略戦争などの世界規模の動きが起きた時、図1、図2でも表されているように、原油や為替レートに大きく変化を与えるという現実を目にしてきました。

3.プロパンガス料金の値上げは必要なの?

これまで解説してきたように、原油価格と為替等の影響によりプロパンガス料金は変動しています。ある程度の値上がりも仕方ない部分はあります。
ここからは、毎月プロパンガスの料金を払っている消費者の立場にたった話になります。まずは、プロパンガスの価格の推移から解説していきます。

(1)プロパンガス価格の推移

2021年から2023年4月までの日本国内のプロパンガス価格推移を、図8に描いています。日本の東京、大阪、福岡の三都市圏の価格です。数値は一桁100円です。

参考

石油情報センター最新価格情報

図8から、2021年10月からプロパンガス価格が値上がり2022年末には緩やかになり、価格の大きな変化はありません。
この推移は、図1、図2から、原油高、為替相場変動が落ち着きだしたころと一致します。

2011年4月から2023年4月までの、全国8地域のプロパンガス価格のトレンドを検証した結果、2017年4月からは上記の文で書いた内容と同じ傾向でした。
2011年4月から2017年4月までは、大きく上下に変動しています。ほぼ原油価格と合わせたような動きとなっています。

2017年頃までLP販売価格は、値上げ・値下がりがありましたが、2017年以降は、LP販売価格は値上げしかありませんでした。
(原油価格・為替相場などのデータが2011年頃からが見つからないため、プロパンガス価格との関連を明らかにはできませんでした)

(2)平均価格・相場価格は当てにならない

プロパンガス会社は昔から、原油価格と関係ない値上げをしています。
現在の料金が高いのにさらに値上げをしたり、原油価格が下がっていても料金を下げず、値上げをする会社ばかりです。
原油価格の値上がり以外の言い訳として、この地域の相場と同じ・平均価格より安い等、それらしい理由を並べます。一般的に公開されている平均や相場価格は下記のサイトで確認できますが【その価格自体が必要以上に高い】という事実を知らない消費者さんが多すぎます。例えるなら、電化製品の値段のように、家電メーカー等が出している希望小売価格と同じです。

参考

日本プロパンガス協会2022年度 CIF価格 貿易統計

参考

石油情報センター一般小売価格 LP(プロパン)ガス 速報(毎月調査)

原油価格が高騰している理由【2022年度3月最新】

参考までに、販売会社として適切な会社かどうかの判断基準となるポイントをいくつか紹介しておきます。

経産省資源エネルギー庁が2017年に制定した「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」というものがあります。
その中で、プロパンガス販売事業者は、次の4つのことを果たすように求めています。

  • ア) 標準的な料金メニュー等の公表
    一般消費者等が料金水準の適切性を判断しやすくなるよう、自社の標準的な料金メニュー及び、一般消費者等による平均的な使用量に応じた月額料金例を公表する必要がある。
  • イ) 液石法第14条に定める書面を交付するときの説明
     一般消費者等が液化石油ガスの供給を受けることで負担することとなる費用を巡るトラブルを未然に防止するため、一般消費者等に対して液石法第14条に定める書面を交付するときに、当該書面に記載されている事項について説明を行うことが必要である。 「液石法施行規則」第13条5号から9号の内容です。
    • 5. 液化石油ガスの価格算定方法、算定基礎項目と内容の説明
    • 6. 供給設備と消費設備の所有関係
    • 7. 供給設備と消費設備の設置・変更・修繕・撤去に関する費用の負担方法
    • 8. 液化石油ガス販売事業者が所有する消費設備を、消費者が利用する際に消費者が支払う費用と徴収方法
    • 9. 消費設備に係る配管について、液化石油ガス販売契約解除時に、所有権を液化石油ガス販売事業者から、消費者に移転する際の精算額計算方法
  • ウ) 料金を変更する際の一般消費者等に対する事前通知
     一般消費者等と締結した液化石油ガス販売契約に基づく液化石油ガスの販売価格を変更する場合には、原則として変更後の販売価格の適用が開始される日の1か月前までに一般消費者等に対して、検針票又は請求書等に変更後の販売価格及び変更する理由を記載して通知するか、検針票又は請求書等に変更後の販売価格及び変更する理由を記載した書面を添付して通知する必要がある。
  • エ) 苦情及び問合せへの適切かつ迅速な処理
    一般消費者等から寄せられた苦情等の記録簿(苦情等の受付日、内容及び処理状況等を記録したもの)を作成し処理状況を管理する必要があるとともに、苦情等を適切かつ迅速に処理する必要がある。
参考

経産省資源エネルギー庁HP

上記の内容はガスだけではなく、一般常識・一般的な契約時の内容になっていると思いますが、それも踏まえて皆さんに気を付けてもらいたいのは、プロパンガスは公共料金ではなく、自由価格です。
都市ガスのように国が決めた価格で販売するというスタイルではなく、販売会社の胸三寸で価格が決められます。販売会社の胸三寸といっても原油価格の値上げや為替相場の変動によるやむを得ない値上げになる可能性もあります。
それ以外にも、家賃や人件費・ガス設備の材料・会社の維持費や必要経費の値上げなど、値上げの理由はいくらでもあるとは思いますが、図1~3から分かるように、原油価格・為替相場も下がり、LPG単価も下がっているはずなのに、なぜかプロパンガス料金は下がらず、値上げを続けている会社が多いという事。
その値上げを鵜呑みにするのではなく、本当に必要な値上げなのかどうかを1度考えてみる事も今の私達には必要になってきているのではと思います。

まとめ

このコラムは、「プロパンガスの値上げの理由」ですが、原油と為替の変動によって、プロパンガスの料金値上げにも影響を及ぼすという事が分かっていただけたかと存じます。
その変動も、ここ数年に起こったコロナ感染症やロシアのウクライナ侵略戦争などによって引き起こされたのが大きな要因となっています。

今回取り上げたデータは、大きな変動によるデータに基づくため、必ずしもいつの時代にも起きる価格の変動とは異なります。
最近になって、データが落ち着きだしましたので、1年後のデータから今回の変動によるプロパンガス値上げがまた評価できるでしょう。
というのも、5月6月と少しプロパンガス小売価格が下がっていることがデータとして現れました。一時的なものかどうかは今後の推移を見ないと評価できません。

日常の生活では、暮らしに関して必ず疑問と思うことが出てきます。それを近くの人にすぐ聞けるようなことであれば、それで解決します。プロパンガスの料金に疑問があったときには専門とする人に聞くことが、1番安全な手段です。
どこに聞けば良いのか分からない方や、信頼できるガス会社を探したいなら、プロパンガス専門の相談機関「プロパンガス消費者生活センター」に、気軽な気持ちで1度相談してみる事をお勧めします。

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