プロパンガス価格の仕組み
プロパンガスの価格が決まるまで
プロパンガスが家庭に届けられるまでについて、都市ガスと比較しました。まずは下記図をご覧ください。
上記図から分かるように、都市ガスは基本的にガス配管が敷設され、消費者のもとに届けられます。それに対して、プロパンガスはガス販売所まで輸送され、そこから消費者のもとにボンベに積み替えられて届けられます。都市ガスとプロパンガスの価格差の1つは配送ルートに影響されていると分かります。 図1からプロパンガスの価格は、原産地から家庭に届けられるまでの経費が、重なって請求されていると分かります。それでは、家庭に届けられるまでにどのような経費が掛かっているかを図2でご紹介します。プロパンガスは中東などからタンカーで運ばれ、輸入業者から卸売業者へ、そこから小売業者まで運ばれ、さらにそこから一般家庭に運ばれます。 図2で、四角で囲み、お金のシンボルが付いているところが、プロパンガスの価格に反映される仕事の項目の1例です。もちろんこの他にいろいろな項目があるでしょう。
例えば、
- 事務所で働く事務員の賃金
- 機器の検査は販売所から専門業者に委託費用
- ガスメータの定期検診費用
などです。
プロパンガスの価格がいろいろな経費が積み重なっていることが分かりました。そうすると同じ日本でも場所によって価格が違うことが予想できます。 日本全国のプロパンガスの価格がどれほど違うかの比較確認してみましょう。
図3の価格は、10m3を使用したときの平均価格を表しています。北海道は10,000円に対し、関東では7,000円と差があります。さらに図4では2018年6月から2019年6月までの価格変動を表しています。この図では、価格変動が分かりやすいように、北海道だけを軸を別にしています。変動は数百円程度ですが、変動の大きな要因は、ガス原産地から日本に持ってくるまでの費用と考えてよいでしょう。
プロパンガスの価格とは
プロパンガスの料金体系は、都市ガスや電気料金と同じように、基本料金と、使っただけのガス量に応じて支払う従量料金に分けられています。 都市ガスや電気料金とは違うところは、プロパンガスの価格は、自由料金ということです。自由料金ということは、ガスを販売する会社が料金を自由に設定できるということです。そのため、同じ地域でも、販売者によって異なる料金があるということです。
この自由料金という制度は、独占禁止法によってカルテルなどで、協議して価格を決めることが無いようにという、法律に基づいています。
例えば、ガスを降ろす場所が、遠いところと近いところ、また、販売する消費者が街中でまとまっている所と簡素で散らばっている消費者、このような販売する場所によって、同じガス価格では営業が成り立たちません。そのため、数業者が集まってガス価格を決めることを禁じているわけです。
ただし、同じ地域でガス価格が異なるガス販売者があり、同じようなサービスであれば、安い方を選ぶという消費者の選択権があります。そのため、不当な価格での販売は、自然淘汰されると言ってよいでしょう。
基本料金と従量料金とは
基本料金とは、ガスを使うにあたってガス会社が決める料金です。基本料金を決める根拠には、ガスの運営費用や監理費用などガス会社によって違います。 これに対し、従量料金とは、1m3当たりの料金で、例えば、1m3あたり300円であれば、使ったガス量×300円の従量料金が基本料金に上乗せされて請求されます。基本料金は、ガス量がどれだけであっても変わりません。0.5m3使っても20m3使っても同じ基本料金が請求されます。
さらにガスの従量金には、0~5m3は350円、5~10は330円、10~15m3までは300円というように、使用量に応じて単価従量料金が決められている場合があります。 例えば、12m3使用したときに、1m3あたり330円という設定で販売されている場合は、従量料金は3,960円になります。対して、0~5m3、5~10…と区切られて販売されていれば、1,750円+1,650円+600円=4,000円として請求されます。
基本料金や従量料金を公開するガス会社は少ないので、価格がどうなっているかを知るには、直接ガス会社に問い合わせる必要があります。
プロパンガス販売価格の実際を見てみよう
石油情報センターでは全国、各県、各市町村の価格を公開しています。
プロパンガスの価格を、東京都を例に紹介します。表1に東京都の1019年6月の価格を紹介します。
表1の家庭用小売り販売価格は、基本料金と従量料金を合わせた価格で、それぞれ5m3、10m3、20m3、50m3を使用したときの販売価格です。金額は、それぞれ平均値と最低価格それに最高価格に分けて記載されています。プロパンガスの価格の最高値と最低値の価格差の要因の一つには、販売先が遠くにあるなどの要因があると考えらます。
図5は、表1をグラフ化したものですが、緑の線は、1m3当たりの平均単価を表しています。
5 m3と50 m3での1 m3当たりの単価に、30円程度の差があることがわかります。
地域 | 基本料金 | |
東京都 | 最高値 | 2,160 |
最低値 | 1,296 | |
平均値 | 1,701 |
家庭用小売り販売価格(消費税込み) | |
5 m3 | |
最高値 | 6,345 |
最低値 | 3,402 |
平均値 | 4,353 |
10 m3 | |
最高値 | 9,612 |
最低値 | 5,454 |
平均値 | 6,972 |
20m3 | |
最高値 | 17,000 |
最低値 | 9,423 |
平均値 | 12,159 |
50 m3 | |
最高値 | 42,500 |
最低値 | 19,000 |
平均値 | 26,707 |
プロパンガス価格の料金体系
プロパンガス価格
プロパンガスの価格は、基本料金と従量料金で構成されていることを、前章でご紹介しました。プロパンガスの価格について、もう少し、詳しく見てみましょう。
プロパンガスの価格の体系は、図2で紹介しましたように、原産地の輸送から消費者のもとに届くまでの費用の積み重ねです。具体的には、次のようになり、これらが月々支払うガス料金の元になります。
(1) 輸入価格
サウジアラビア原産地に支払う価格(FOB価格)とタンカーで運ぶ費用です。
(2) 輸入元売り価格
タンカーで運んだガスを貯蔵基地に保管し、それにかかわる運送費・保安管理費などの費用です。
(3) 卸売価格
貯蔵基地から販売元までの配送費、充填費用、管理費、人件費などの費用です。
(4) 小売価格
販売元での貯蔵する保安管理費、ボンベなどへの充填費用、運送費、人件費の費用です。他には、消費者に届けた後も、ガスメーターの検針や集金、ガス機器の管理などの費用が掛かります。
(5) その他
さらには、消費者のもとにガス機器の据付けを行ったときの、機器代金や工事費用を、一括で払わずに分割での支払いとしたときの費用もあります。
ガス料金とは
以上の費用が、基本料金や従量料金に反映されます。どの費用がどの料金に加わるかは、ガス会社によって異なりますが、基本的には次のような料金に反映されます。
- ボンベなどのガス容器費用
- ガス量を測るガスメーター費用
- ガス機器の定期検査などの保安費用
- ガスメータの検針と集金
- ガスの原料費用
- ガスの運送費用
- 集中管理システムの利用料金
- ガス機器の借り受け代金・分割払い費用
- 設備の修理費用
ガス料金の支払い制度
ガス料金の支払い制には、次の3つの形態があります。
二部料金制
大きくは、基本料金と従量料金に分かれます。基本料金には、前項(2-2)で紹介した設備利用料金が加わっています。
三部料金制
大きくは、基本料金と従量料金、さらに設備利用料金に分けて請求されます。
最低責任使用料金制
基本料金(設備利用料金を含む)と、ある量まではいくら使っても固定されたガス料金を支払う制度です。使用量が、固定の設定量以上になると、その単価に応じた使用料金が加算されます。
例えば、5 m3で4500円と設定されたときは、5 m3まではいくら使っても4500円を支払いますが、5 m3を超えると、(超えたガス量×ガス1m3当たりの単価)の料金が、4500円に加わって支払うことになります。
3つのガス料金の支払い制度について紹介しましたが、これらの制度を採用して販売している小売業の平均の割合は次のようになっていて、圧倒的に二部料金制が多く採用されています。
- 二部料金制:97.8%
- 三部料金制:0.8%
- 最低責任使用料金制:1.5%
スライド料金制
量料金の仕組みが変わるのが、この料金制です。すでに上記項目でご説明していますが再確認してみましょう。
0~5m3は350円、5~10は330円、10~15m3までは300円というように、使用量に応じて単価従量料金が決められている制度が、スライド料金制度です。
例えば、12m3使用したときには、
- 0~5m3までは、5m3×350円=1,750円
- 5~10までは、5m3×330円=1,650円
- 10~12m3では、2m3×300円=600円
トータル4,000円が従量料金として請求されます。
原料費調整制度
ガスの元値は、サウジアラビアなど供給元の卸値や、タンカー輸送料によって随時変化します。そのため、変化分をガスの従量料金に反映した価格制度が、原料費調整制度です。
全国平均では、15.7%でこの制度を採用して販売されています。
自宅の1m3単価の計算方法
プロパンガスを使っていて、今月はいくらかかるんだろうかと、気になる方もいることでしょう。そんな時に計算できる方法を紹介します。
すでにプロパンガスを使っている場合には、月々、請求書が送られ支払っているはずです。二部料金制で契約していれば、伝票には、ガスの使用量と基本料金と従量料金が記載されています。
基本料金は何m3使用しても変わらないため、1m3あたりの金額には直接関わってきません。従量単価の場合でも、スライド制でなく一律の単価で契約していれば、
従量料金÷ガスの使用量
で、1m3当たりの価格がわかります。
従量料金がスライド制で契約していれば、請求書に0~5m3:350円、5~10m3:330円、10~15m3:300円のように記載されています。もし記載がなければ、直接ガス会社に問い合わせれば教えてくれます。
例えば、上のようなスライド制の従量料金であれば、今月は14m3を使っているから、
0~5m3までは、350円×5m3=1,750円
5~10m3までは、330円×5m3=1,650円
10~14m3までは、300円×4m3=1,200円
合計、4,600円と計算できます。どれだけ使ったかは、プロパンガスボンベの所についているガスメータのメータ値を読めばわかります。
さらに、10m3を超えて使っているなら、自動的に10m3までは3,400円掛かっているわけですから、300円×4m3=1,200円と計算すれば、合計のガス重量料金は、
3,400円+1,200円=4,600円
と計算できます。
まとめ
プロパンガスを使っていると、価格が高いというイメージがあるため、今月はどれだけ掛かるか気になるものです。さらに、都市ガスに比べて高いという話もあり、不当に取られているのではと思うこともあるでしょう。
そのような不安を解消するために、プロパンガスの価格がどのようにして決められ、請求されているかを理解することは大切なことです。そうした知識があれば、プロパンガス会社と値段の交渉をするとき、お互いに理解し合って契約へと結びつくことでしょう。 逆に、ガス会社の説明が、知っていることと相違があり説明があやふやなときは、疑って他の会社に相談するなどの対応を取った方が良いでしょう。
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