都市ガスからプロパンガスへの切り替え!バルク供給とは?

引っ越しなどで、移転先ではまだ都市ガスが供給されていないことも多くあります。そうするとせっかくもってきた都市ガス用のガスコンロや給湯器が使えなくなります。
では、都市ガスとプロパンガス用との違いは何でしょうか?
また、ガスの機器を転用したらどのような問題が起こるのでしょうか。

さて、プロパンガス用のコンロや給湯器を設置した後の問題は、プロパンガスの供給です。
普通はプロパンガスボンベを使いますが、事情によって使用ガス量が多いと、ボンベをしょっちゅう取り換える必要があります。そのために、ボンベの数を増やし、容量を大きくするという方法もありますが、もう一つ、バルク容器を設置するという方法もあります。

このコラムでは、都市ガスからプロパンガスへ切り替えるときの注意点、バルク容器を設置する方法や耐用年数についてご紹介します。

1.都市ガスからプロパンガスへ変えるときの注意点とは?

(1)プロパンガスと都市ガス

図1では、プロパンガスと都市ガスが、一般家庭に導かれる様子を紹介します。

図1からわかるように、プロパンガスと都市ガスが一般家庭に持ってこれるまでの大きな違いは、

  • プロパンガス
    ガスボンベから供給されます。
  • 都市ガス
    ガス導管から供給されます。

この2つだけです。
家庭内にあるガスコンロ、ガス給湯器は、見かけ上はまったく同じものです。それなら、都市ガス用のガス器具をプロパンガスに、逆にプロパンガス用のガス器具を都市ガスに、転用できると考えることは、自然でしょう。

(2)プロパンガスと都市ガスのガス器具の互換性

では、本当に、プロパンガスと都市ガスのガス器具は、互換性があるのでしょうか。
ここでプロパンガスと都市ガスの違いを表1でご紹介します。

機能 プロパンガス 都市ガス
ガス成分 プロパン(C3H8) メタン(CH4)
発熱量 24,000 kcal/m3 10,750 kcal/m3
比重 1.5(空気より重い) 0.6(空気より軽い)
供給方法 ガスボンベ ガス導管
表1 プロパンガスと都市ガスの違い

表1からわかる、2つのガスの違いは、ガス成分であり、その結果が、発熱量の違いです。 プロパンガスの発熱量は、都市ガスの2.2倍あります。

もし、供給がプロパンガスのラインに、都市ガス用のコンロをつないだとします。 すると、都市ガスコンロには炎が適当なようにガスが流れますが、これにプロパンガスが流れれば、プロパンガスの熱量は2.2倍ですから、

  • 炎が大きくなる
  • 不完全燃焼により一酸化中毒の恐れがある

となって、事故の原因となります。
一方、供給が都市ガスのラインに、プロパンガスのコンロをつないだ時は、都市ガスの熱量が0.45倍となるため、

  • 炎が小さい燃焼となる
  • コンロの故障が起こる

ということが起こります。
いずれにしても、ガス種に対して異なるガスの器具をつなぐことは、事故・故障の原因となります。

(3)都市ガス用器具をプロパンガス用に改造できる?

引っ越しによってプロパンガスの生活になったとしても、新しく買ったばかりの都市ガス用器具を、プロパンガス用器具に買い替えるのは、もったいないと誰しも思うでしょう。
都市ガス用器具を改造して、プロパンガス用器具として使えないでしょうか。

実は、使えるのです。と言っても、改造のための部品が作られているという条件の元です。機種が古くなると、部品が手に入らないことがあり、その時は改造は不可能です。

ガス器具メーカーでは、都市ガス用器具をプロパンガス用器具に、またその逆も可能としています。ただし、改造ということでの作業ではなく、修理として扱います。もちろん、部品が手に入るという条件付きですが。なお、この改造作業は、有資格者が行わなければなりませんので、部品を買ってきて自分で、ということはできません。

(4)都市ガス用器具をプロパンガス用に改造する費用は?

ガスコンロの場合
  • 交換用部品の価格は、数千円から1万円程度
  • 改造作業は、資格のある人しかできません
  • メーカー技術者の作業料と技術料などで1万円程度
  • 総計で、1万円から2万円程度
給湯器の場合
  • コンロの3倍程度、3万円から6万円となる見込み

以上の費用は参考で、機種・メーカーによって変わってきます。 なお、持っている機種、使っている期間によっては、交換部品が手に入ったとしても、買い替える方がよいというケースも考えられます。 販売事業者から見積もりを取って、ご相談されたらいかがでしょうか。

2.バルク供給とは?

(1)プロパンガス供給の方式比較

図2では、プロパンガスのボンベ供給とバルク供給との比較を紹介します。

表2で、給湯器のサイズの種類と、流せる量を紹介します。

項目 バルク貯槽 フルオート バルク容器
製造される法律 特定設備検査規則 容器保安規則 高圧ガス保安法
容量 1000kg未満
1000kg~3000kg
容量によって規則が変わります。
1000kg未満
1000kg~3000kg
容量によって規則が変わります。
3000kg以上可能
設置すべき付属品 安全弁、液面計、過充填棒主装置、流出防止装置、ガス検知器など (貯槽や容器ごとに少し違います)
設置方法 地上または地下に基礎から移動しないように固定 地上基礎に固定 地上基礎に固定
設置場所 一般消費者 一般消費者 工場など事業者

図2の上段は、ガスの使用量が多く、ボンベを複数連ねて供給する方式です。一般家庭では、ボンベ2本で十分足りますが、大きな施設で多量のガスを使うという前提としています。この方式は、ガスの使用量が予定より多くなると、ひっきりなしにボンベの入れ替えが必要になるという問題があります。

この問題に対応する方式が、図2下段のバルク貯槽を設置する方式です。バルク貯槽の容量は、ボンベに比較して大容量を持つことができるため、ボンベの入れ替えの手間がなくなります。

(2)バルク供給システムとは?

図3は、バルク供給システムの紹介です。

バルク供給システムとは、消費者の敷地内地上あるいは地下にバルク貯槽を設置し、貯槽にはバルクローリー車で、プロパンガスを充填する方式です。

バルク貯槽の設置に当たっては、液石法(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)によって、細かく規定されています。

(3)バルク貯槽とバルク貯槽容器

図3で示しているバルク貯槽・容器は、このバルク供給システムで使用される貯槽で、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」で詳細に規定されています。
簡単に、表2で紹介しましょう。

表2 バルク貯槽・容器

*工場に設置する貯槽は、バルク供給設備としての規定はありませんが、バルク供給と同じような供給方式です。
*一般消費者とは、一般の家庭、ガスを使って冷暖房・調理を行う人、旅館や理容業などのサービス業の人、医療保険業者などです。

(4)バルク貯槽などの寿命とは?

さて、バルク貯槽やバルク容器の耐用年数はどれほどあるでしょうか?

その答えは、バルク貯槽は、検査に合格する限り何年でも使用できます。

バルク貯槽・バルク容器は、関連する法律規則から、定期的に検査を受けて合格しなければ、継続して使用することはできません。貯槽や容器は鉄でできていますから、錆による劣化は免れません。外に設置しておいて放置すれば、錆がもとで貯槽に穴が開いてしまう可能性があります。

そのため定期的に錆止め塗装を繰り返すなど、メンテナンスをしっかりやれば、耐久年数は上がります。ただし、付属品が劣化で機能低下するケースがあるため、定期に交換する必要があります。

(5)バルク貯槽・容器の検査とは?

バルク貯槽・バルク容器の検査について、表3でご紹介します。

  バルク貯槽 バルク容器
項目 本体 付属機器 本体 付属機器
適用法規 液石法 液石法 高圧ガス保安法 高圧ガス保安法
検査周期 経過年数20年
以下:20年
経過年数20年
以上:5年
経過年数20年
以下:20年
経過年数20年
以上:5年
安全弁は5年
経過年数20年
以下:5年
経過年数20年
以上:2年
経過年数20年
以下:20年
経過年数20年
以上:5年
検査項目 目視検査
非破壊検査
厚さ検査
耐圧検査
気密検査
目視検査
非破壊検査
厚さ検査
耐圧検査
気密検査
外観検査
防食塗装
耐圧検査
質量試験
目視検査
非破壊検査
厚さ検査
気密検査
性能検査

*液石法=液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
*経過年数20年以下:20年とは、バルク貯槽を設置してから20年は法定検査の必要はありませんが、20年経過したら、初回の法定検査が必要になるということです。

  • バルク貯槽の取り外し レッカー車、基礎の斫り
  • バルク貯槽の搬入 検査場まで運搬
  • バルク貯槽残ガス回収など
  • バルク付属機器取り外し
  • 貯槽検査 外観検査・耐圧検査・気密検査
  • 外面ショットブラスト・塗装
  • バルク付属機器取り付け
  • バルク貯槽の運搬 現地までの搬入
  • バルク貯槽の取り付け レッカー車、基礎工事

なお、ここまでの手順から、検査の費用だけでなく、工事費用が結構掛かることが分かります。

(6)バルク貯槽・容器の検査費用

1000kgの貯槽の費用が400万円から500万円の見積もりが出た、とWEB上の紹介記事に乗っていました。真偽のほどは分かりませんが、費用項目が次のようになりますので、あながち誇張とも言えません。

検査に掛かる費用
  • バルク貯槽の取り外し、取付け工事費用
  • 運搬・重機などの車両費用
  • バルク貯槽の残ガス回収工事費用
  • バルク貯槽検査費用・付属機器検査費用
  • 外面ショットブラストなどの貯槽の整備費用

(7)バルク貯槽くず化とは

バルク貯槽は、設置から20年経過すると、法定検査を受ける必要があります。その手続きや検査内容は、これまでご紹介した通りです。

すなわち、20年経つと、検査するために、結構なお金がかかります。さらに、それ以降は、5年ごとに同じような検査があり、短い周期で、検査にお金がかかります。 さらに、バルク貯槽は20年もたつと、設置環境やその間のメンテナンスの状況によっては、検査に合格させるためには、結構手を加える必要があるかもしれません。

そこで考えられたことが、バルク貯槽のくず化、です。これは、バルク貯槽を検査せずに廃棄して、代わりに新しい貯槽と交換するという考えです。

もともとバルク貯槽のくず化とは、20年も経ったバルク貯槽が、検査に合格せずに廃棄することになり、そのため安全に廃棄処分するための手順です。

(4)項のバルク貯槽などの寿命とは?では、貯槽のメンテナンスをしっかりやれば、耐用年数は上がると紹介しました。 しかし、20年目の検査費用と検査に関連する費用、それまでの維持管理費用を考えると、貯槽単体の価格にもよりますが、20年で破棄するということも、リーズナブルな考えといっても良いでしょう。 そのような意味では、バルク貯槽の耐用年数は20年としてもよいかもしれません。

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