五右衛門ぶろのように、かつての日本の風呂は、薪で湯を沸かしていました。しかし、薪が燃え尽きてしまえば、時間が経つと、せっかくの暖かいお湯も冷めてしまいます。
振り返って、現代をみれば、風呂を沸かすときに、薪をくべるような手間はなく、自動オンのスイッチを入れるだけで、しばらくすればお風呂は暖かいお湯で満たされます。 さらには、お湯を沸かしてから時間をおいても、冷めることなく暖かく保温されます。
このように、暖かい家庭を作り上げる源の一つとなっているお風呂は、給湯器の機能向上がそうさせているのでしょう。 このコラムでは、プロパンガス給湯器の機能についてご紹介します。
給湯器の分類と種類
給湯器の種類
図1でガス給湯器の機種をご紹介します。 なお、ここのガス給湯器とは、プロパンガス、都市ガスともに同じ機種、機能のため、両者のガスを指しています。
ガス給湯器は、次の種類に分けられます。
ガス給湯器の種類には、他にも、ガス瞬間湯沸かし器や風呂釜などがありますが、図1では、台所と風呂にお湯を供給する種類だけの紹介としています。
- 給湯専用器
お湯を沸かして供給するだけの給湯器です。台所、洗面所、シャワー、風呂でお湯が使えます。 - ふろ給湯器
他の種類の給湯器と同様お湯の供給はもちろん、風呂の湯はりと保温、冷めたお湯をもう一度設定温度まで沸かす追炊きの機能をもつ給湯器です。 - ハイブリッド給湯器
図2で紹介する図が、ハイブリッド給湯器のイメージです。ハイブリッド給湯器は、電気式給湯器にガス給湯器が加わった給湯器です。 電気で夜間に稼働して貯湯タンクにお湯を溜めますが、急にさらにお湯が必要になったときは、ガス給湯器でお湯を沸かします。
給湯器の種類 ― エコモードによる分類
エコモードによる分類とは、省エネ型かどうかの分類です。このコラムだけの言葉ですので、ご注意ください。
図3は、給湯器の構造のイメージ図です。
- 通常型
通常の給湯器で、供給される水を燃焼したガスの中を通して、給湯します。 - エコジョーズ型
エコモードの給湯器で、供給された水を、ガスの燃焼した余熱を利用して温め、その温まった水を、燃焼したガスの中を通して、給湯します。
エコジョーズの効率は、通常型の80%から95%まで効率が良くなり、プロパンガスの使用量が15%近く削減できます。
ふろ給湯器の機能による分類
ふろ給湯器を機能別に分類すると、セミオート機能と、フルオート機能に分類できます。
なお、セミオートはメーカーによってはオートと表現している場合があります。図4では、給湯器の機能のいくつかを紹介しています。
- 自動湯はり
スイッチをONするだけで、設定した温度で、設定したお湯の量だけ、自動でお湯を張ります。 - 自動追いだき・自動保温
湯ぶねのお湯の温度が設定より低くなると、設定温度となるように自動で温度を上げるように、湯ぶねのお湯を循環させます。 - 自動たし湯
設定した湯ぶねのレベルが低くなると、自動でお湯を張りこみます。 - おいだき配管自動洗浄追いだきをするときには、湯ぶねのお湯を循環させます。そのため、湯ぶねにある汚れが配管中に流れ込み付着し、それが蓄積すると、お湯の循環時に湯ぶねに流れ込んで、お湯が汚れます。
自動洗浄は、循環用の配管内を掃除するために、配管にきれいな水を流し込んで、配管を掃除する機能です。
それぞれの便利な給湯機能は、セミオートとフルオートでは付属しているものと、いないものがあります。表1に分類を紹介します。
表1 ふろ給湯器の付属機能
項目 | 物理的値 | 分かり易く言うと | どうなるの? |
ガス組成(分子式) | プロパン: C3H8 (ブタン: C4H10) |
- | - |
ガス比重 | 1.5 | 空気の比重が1.0のため 空気より重い | ガスが漏れると下側の床周辺に溜まります |
発熱量 | 24,000 kcal/m3 (99 MJ) | 高いカロリーがあり、都市ガスの2倍程度の熱量です。 | お湯を沸かすのに、都市ガスの半分の量で済みます |
蒸気圧(20℃) (40℃) | 0.73MPa 1.25MPa |
ボンベには20℃で0.73MPaの圧力をかけ、液体として、消費者に届けられます。 | ボンベ周囲の温度が上がるとボンベ内の圧力が上がり、危険です。温度が上がらないよう日陰で保管するなどの対策が必要です。 |
体積変化 | 液体プロパン体積:気体プロパン体積=1:250 | 加圧された液体のプロパン1リットルを大気に放出すると、250リットルに膨張します。 | 消費者に届けるには、ボンベに圧力を掛けたプロパンガスを、液体として供給します。 |
空気に対する燃焼範囲 | 下限:2.2% 上限:9.6% |
空気に対してプロパンガスが、2.2%~9.6%の間にあるときに、燃焼します。 | 燃焼しても、空気が十分にないと、着火しない、あるいは、不完全燃焼を起こし、毒性の一酸化炭素COが出ます。 |
臭い | 無臭 | ガス漏れがあっても気づかない | ガス漏れに気付くように、着臭剤を添加します。玉ねぎが腐ったような臭いです。 |
給湯器の号数
号数による違い
号数とは
給湯器の大きさ、給湯できるお湯の量は、「号数」で表現されます。 例えば、16号であれば、1分間に16リットルのお湯が供給でき、24号であれば24リットルというように表されます。では、この号数とは何でしょうか。
号数とは、17℃の水を42℃のお湯にするときに、1分間に給湯器から出せるお湯の量を表します。
表2で、給湯器のサイズの種類と、流せる量を紹介します。
表2 給湯器のサイズ
サイズ | 通常(水温17℃) | 冬場(水温5℃) |
10号 | 10 ℓ/分 | 6.8 ℓ/分 |
16号 | 16 ℓ/分 | 10.9 ℓ/分 |
20号 | 20 ℓ/分 | 13.6 ℓ/分 |
24号 | 24 ℓ/分 | 16.3ℓ/分 |
28号 | 28 ℓ/分 | 19.0 ℓ/分 |
号数と給湯器のお湯の量の計算
16号の給湯器であれば17℃の水を42℃のお湯にするときに、1分間に給湯器から16リットル、24号の給湯器であれば17℃の水を42℃のお湯にするときに、1分間に給湯器から24リットル出すことができる給湯器です。
。
ここで言う17℃は春と秋の平均的な水の温度です。
冬は5℃になりますが、16号であればそれでも16リットル出せるのでしょうか…?
答えは、いいえ、16リットルは出ません。
5℃の水であれば、42℃のお湯の量は、1分間に10.8リットルです。
春(秋)と冬では、同じ温度のお湯を出す能力が違ってきます。冬は外気が冷たいのでお湯を出す能力が減少します。
「17℃の水を42℃のお湯にして、1分間に給湯器から16リットル出す」ということは、16リットルの水を、17℃から42℃に上げる熱量は、1分間に給湯器がガスを燃焼させる熱量に等しいということです。
16号の給湯器が1分間に燃焼する熱量は、水の温度が変わっても、設定温度が変わっても同じ熱量です。したがって、この熱量を5℃の水に与えて、42℃までに流れるお湯の量は、
(42℃-17℃)×16リットル=(42℃-5℃)×お湯の量
から、
お湯の量=(42℃-17℃)×16リットル÷(42℃-5℃)=10.8リットル
となります。
水の温度が違うときの給湯器のお湯の量の計算方法
冬場の水の温度は地域によって変わります。また、お湯の温度の設定も個人の好みで変わってきます。
16号の給湯器を使っていて、冬場にどれだけのお湯が流せるのか、簡単に求める秘策をお教えしましょう。
ここからは算数のお話になります。
冬場の平均温度がX℃、給湯器の設定温度をY℃とします。
16号の給湯器が1分間に燃焼する熱量は、水の温度が変わっても、設定温度が変わっても同じ熱量ですから、
(42℃-17℃)×16リットル=(Y℃-X℃)×お湯の量
の式が成り立ちます。
したがって、お湯の量は、
お湯の量=(42℃-17℃)×16リットル÷(Y℃-X℃)=25℃×16リットル÷(Y-X)℃
となります。
試しに1月の東京で給湯器の設定温度を40℃としたときに、給湯器が1分間に流す量を求めてみましょう。
東京の1月の平均水温は、東京都水道局のHPから求められます。都庁付近で、約9℃と出ています。それでは、計算してみましょう。
お湯の量==25℃×16リットル÷(Y-X)℃=25℃×16リットル÷(40-9)℃=12.9リットル
です。
もし、24号の給湯器を使っていたらどうでしょうか。上の式の16リットルを24リットルに変えれば、求められます。
お湯の量=25℃×24リットル÷(40-9)℃=19.4リットル
です。
号数の計算方法
これからガス給湯器を買おうと思っている方も多くいると思います。でも、どの大きさを買えば?、と悩んでいる方もおられるでしょう。
24号を買えば大は小を兼ねるで、いいんじゃないかと思っても、大きいサイズほど値段が高いので、無駄が生じるかもしれません。
給湯器のどのサイズを買うかは、どれだけお湯を使うかを算出すれば、決められます。
そのときのポイントは、同時に何を使うかです。例えばキッチンで洗い物をしているときに誰かが、シャワーを使う、というようにです。
というのも、サイズが小さい給湯器を使っていて、シャワーをしているときに、キッチンで洗い物を始めたとします。このときに、給湯器の流せる量より多い量が必要となるため、シャワーの出る量が急に弱くなり、家庭内で不満が出てしまう原因となるでしょう。
(1)冬に使用するお湯の量から給湯器の号数を知る方法
17℃の水を42℃のお湯にして1分間に16リットル出す給湯器のサイズは16号でした。
しかし、17℃の水は、春と秋の平均水温です。冬は温度が下がるため、給湯器から出るお湯の量も少なくなるため、給湯器はもっと大きいサイズが必要です。
この章のはじめ 2-1(2)項で、17℃の水を42℃のお湯にして1分間に16リットル出す給湯器は、5℃の水を42℃のお湯にして1分間に10.8リットル出す給湯器と同じと、ご紹介しました。 ということは、5℃の水を42℃としたお湯を、1分間に10.8リットル出す給湯器は、17℃の水を42℃のお湯にして1分間に出す量に計算し直せば、給湯器の号数が分かります。
前で紹介した計算式、
(42℃-17℃)×(17℃水のときのお湯の量)=(42℃-5℃)×(5℃水のときのお湯の量)
から、
(5℃水のときのお湯の量)=10.8リットル
として計算すれば、
(17℃水のときのお湯の量)=16リットル
と計算できて、給湯器の号数が16号と分かります。
(2)冬に使用するお湯の量から給湯器の号数を、もっと一般的に知る方法
冬場の平均温度がX℃、給湯器の設定温度をY℃としたときに、給湯器の必要サイズはどうなるでしょうか。
(42℃-17℃)×(17℃の水のときのお湯の量)=(Y℃-X℃)×(X℃の水のときのお湯の量)
の計算式から、
(17℃の水のときのお湯の量)=(Y℃-X℃)×(X℃の水のときのお湯の量)÷(42℃-17℃)
=(Y℃-X℃)×(X℃の水のときのお湯の量)÷25℃
となります。このときの、(17℃の水のときのお湯の量)が給湯器の号数です。
例えば、前に例題として計算した東京都の冬の場合に、給湯器の設定を40℃として、当てはめてみましょう。そうすると、X=9℃、Y=40℃となります。給湯器で使うお湯の量を12リットルとしたときに、何号の給湯器が必要かを計算してみましょう。
(17℃の水のときのお湯の量)
=(Y℃-X℃)×(X℃の水のときのお湯の量)÷25℃
=(40-9)℃×12リットル÷25
=14.9リットル
これから、給湯器は14.9号以上のものが必要と分かります。
(17℃の水のときのお湯の量)は、給湯器に必要な号数です。そのため、上の式は、
給湯器に必要な号数=(Y℃-X℃)×(X℃の水のときのお湯の量)÷25℃
と書き直すことができます。
(3)何号の給湯器を買えばいいの?
前項から、最もお湯が必要な冬場に、どれだけのお湯を使うかが分かれば、給湯器の必要な号数が分かります。お湯を最も使うシーンを想定してみましょう。
冬場に、キッチンで洗い物をしている傍ら、お風呂場でシャワーを浴びていることが想定できます。
- お湯の設定温度は、Y℃
- 水道水の温度をX℃
- シャワーのお湯の量は1分当たり10リットル
- 洗い物のお湯の量は1分当たり5リットル
とします。
前項(2)の計算式から、
給湯器に必要な号数=(Y℃-X℃)×(X℃の水のときのお湯の量)÷25℃
=(Y-X)℃×15÷25
=(Y-X)×0.6
冬場の東京で、設定温度40℃で使った時は、
給湯器に必要な号数=(40-9)×0.6=18.6号
と計算できます。
給湯器のサイズは、表1から、20号を選べば、良いと分かります。
家庭で使う水の量は、表3のように東京都水道局で試算されています。
表3 用途別使用量
用途 | 使い方 | 使用量 |
洗面・手洗い | 1分間流しっぱなし | 約 12リットル |
歯みがき | 30秒間流しっぱなし | 約 6リットル |
食器洗い | 5分間流しっぱなし | 約 60リットル |
洗 車 | 流しっぱなし | 約 90リットル |
シャワー | 3分間流しっぱなし | 約 36リットル |
*13ミリメートルの胴長水栓で水圧0.1メガパスカル、ハンドル開度が90度の場合、1分間に約12リットルの水が流れます。 https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/kurashi/shiyou/jouzu.html
メーカーの給湯器の説明では、シャワーに10リットル/分、洗い物に4リットル/分としているところがあります。 また、シャワーでも、従来の10リットル/分から、6.5リットル/分の製品を販売するところもあります。
人によってシャワーの温度や洗い物の温度設定が変わりますし、住まいの水道水の温度も地域ごとに異なります。 そのため、ご自身が普段お使いの方法から、どれだけの使用量かを算出されてはどうでしょうか。
給湯器価格
最後に、給湯器の販売価格について、表4でご紹介します。
表4 種類別給湯器販売価格例
種類 | 価格帯(万円) | |||
号数 | 普通型 | エコジョーズ型 | ||
ふろ給湯器 | フルオート | 16号 | 30~32 | 33~35 |
20号 | 33~34 | 36~38 | ||
24号 | 35~36 | 39~40 | ||
セミオート | 16号 | 25~27 | 29~31 | |
20号 | 28~29 | 32~34 | ||
24号 | 30~31 | 34~36 | ||
給湯専用器 | 16号 | 12~17 | 16~20 | |
20号 | 13~18 | 17~21 | ||
24号 | 15~20 | 18~23 | ||
ハイブリッド | 80 |
備考
※ふろ給湯器:暖房付きタイプの給湯器は、1.2倍から1.5倍程度です。
※ハイブリッド:暖房付きタイプの給湯器は、1.2倍程度です。
販売価格はある給湯器メーカーを参考としていますが、どのメーカーもほぼ同じ価格帯と考えてよいでしょう。どのメーカーも独自の便利機能やオプションをそろえているため、同じ20号のふろ給湯器でも価格差は生じているようです。
また、給湯器の設置場所により型式が異なり、価格差の要因となっています。
もう一つ、表4の価格は新規製品の価格です。製造が数年前のものは、生産終了となっているものがあります。
ネット上では、機器の購入と機器の設置をセットとして、製品価格80%引きというサービスが見られます。
ここで注意する点は、販売終了か販売終了が近い製品を納入する場合があることです。
もちろん新品ですので、すぐに壊れる、壊れたときの部品がないなどの問題はないのですが、給湯器の寿命10年と考えると、例えば5年で部品の供給が停止する場合もあります。
そのようなときは、給湯器を買い替える必要があります。
ただ、給湯器の寿命を5年と考え、定期に数年ごとに買い替えると計画すれば、購入時の価格を半値以下に下げられるため、数十年給湯器を利用することを考えれば、トータルとして得かもしれません。
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