ガス給湯暖房機
部屋を暖める方式は、石油ストーブ、ガスファンヒーター、エアコンでと、相場が決まっていました。そのための燃料費をどう切り詰めるか考えている方が多いことでしょう。
部屋を温める方式には、外に置いた熱源でお湯を作り、暖房機にお湯を回すことで、足元から部屋全体に暖気が伝わる方式が出てきています。それが、温水式の暖房機です。
このコラムでは、温水式暖房を中心に、ガス給湯器とどう組み合わせたら、低コストで給湯も暖房もできるかについて紹介します。
1.ガス給湯暖房機(ガス給湯暖房熱源機)とは
(1) ガス給湯器
ガス給湯器は効率の良い、エコジョーズが使われています。ガス給湯器は全てエコジョーズタイプという前提で話をします。
もちろん、給湯器はエコキュートや石油給湯器であれば、給湯器の型式に応じた暖房機を選ぶべきです。給湯器のタイプごとの比較は、別のコラムでご紹介していますので、そちらでご確認ください。
図1は、給湯器周りの機器の構成図です。外壁に設置するガス給湯器を前提とし、ガス給湯器は24号フルオートの大きさとします。
ガス給湯器にはガスと給水の配管が接続され、お湯と風呂の追い焚き用の配管が設置され、給湯器から排出されるドレンを排出する配管が設置されます。これが、ガス給湯器の機器構成と配管系統です。
(2) 暖房用熱源機
図2はガスをエネルギー源とする暖房専用の熱源機を設置して温水で家の暖房を取る場合の機器の構成のイメージ図です。
温水を作るために壁掛けタイプの暖房専用熱源機が壁沿いに設置されます。暖房熱源機から、ガス配管、水の配管、温水用の配管と温水が冷えて戻ってくる配管の構成となります。
図1と図2を見比べると、ガスを使ってお湯を作り、お湯が必要な機器にお湯を送るという構成に変わりがないと分かります。
暖房熱源機から温水を引いて、部屋を暖める機器には、温水ルームヒーター、温水パネル、温水乾燥機、そして床全体に張り巡らす床暖房があります。
これらの機器はすべて温水で熱を発して部屋を暖めますので、電気ヒーターのような火災ややけどなどの心配はなく安全な機器といって良いでしょう。
ただし、熱源機の元はガスの燃焼で温水が作られますから、ガスの取扱いや日頃のメンテナンスには十分注意する必要があります。
(3) ガス給湯暖房機
図1と図2でガス給湯器と暖房機の図を紹介していますが、2つの図を合体したと想像してください。その図が、ガス給湯暖房機の図です。
ガス給湯器と暖房熱源機の目的は違いますが、温水を作るという点では同じで、しかもガス配管やお湯の配管などは同じ目的で設置されます。
給湯器で作るお湯の一部を暖房用の温水として使うことは自然に思いつく考えで、それならガス給湯器と暖房熱源機を一緒の機器としてしまえば、配管が少し増えるだけでガス給湯器と暖房熱源機を2台置くこともなくなり、敷設する配管の数を減らすことができます。また、ガス給湯暖房機1台の省スペースで済むことになります。
2.ガス給湯器から暖房付き給湯器への交換
① ガス給湯器がすでに設置されている場合。
まだ新しいものなら、暖房付き給湯器への買い替えはむだです。暖房熱源機が設置できるスペースがあれば、給湯器と暖房熱源機を併用する方式が良いのではないでしょうか。
② ガス給湯器が古くなって、買い替えも検討している場合。
給湯器と暖房熱源機を併用は、無駄ですから、暖房付き給湯器への交換を推奨します。配管のやり直しなど、既設の配管をそのまま使えないケースも出てきますが、それらの工事費より、給湯器1台の値段の方がもっと高くなります。
③ 買い替えか併用して設置するか
買い替えか、併用して設置するかは最終的には設置スペースがあるかということと、さらに付け加えるならば価格がどれだけ違うのかということになるのでしょう。
3.ガス給湯器と暖房熱源機とガス給湯暖房機の価格
(1) 価格の比較
給湯器・暖房機タイプ | ガス給湯器 24号フルオート |
暖房熱源機 24号フルオート |
ガス給湯暖房機 24号フルオート |
本体価格(定価) (リモコンセット付) |
480,000円 | 290,000円 | 58,0000円 |
ネット価格 (標準リモコン付き) |
180,000円 | 180,000円 | 230,000円 |
工事費用 ドレン配管は別途見積り 暖房機器への接続工事別途見積り |
4,6000円 | 3,5000円 | 4,6000円 |
表1に、メーカー価格、ネット販売価格、工事費用をまとめています。他のメーカーや販売業者によって多少価格は変わってきますが、ガス給湯器やガス給湯暖房機の比較のために、1社のみとしています。特にネット価格は、型式が古い新しいで大きく価格差が出ますので、参照として見てください。
ただし、メーカーの定価よりは安くなります。
また、ランニングコストも、どのような暖房機がどの範囲に使われるかで使用する温水の量も変わりますので、ランニングコストの算出は省かせていただきました。
給湯器単独のランニングコストについては、別のコラムに有りますので、参照されれば、おおよそのランニングコストのイメージが描かれるでしょう。
(2) ガス給湯暖房機導入のケース
家に温水暖房機を入れて、部屋を暖かくしたいときの、ケーススタディを行ってみましょう。
① ガス給湯器が新しいケース
新しく暖房熱源機を購入し、ガス給湯器と並べて設置する。暖房熱源機をガス用とした場合は、ガス給湯器と混同しないように配管を敷設する。
掛かるコストは、
暖房熱源機購入費用 + |
:290,000円 |
暖房熱源機設置までのガス配管 給水配管の設置費用 + |
:20,000円 |
10年間投資金額 | : 35,000円 |
合計 | :34,5000円 |
なお、床暖房などの暖房設備設置と、暖房熱源機の間の温水などの配管工事は別に見積もりを取る必要があります。床暖房の設置場所、設置方法によって大きく工事仕様が変わるためです。
② ガス給湯器が古く、買い替えを検討する時期のケース
ガス給湯器が古くなってくると、故障等のメンテナンス費用も増えるため、暖房熱源機と合わせて、ガス給湯暖房機に買い替えます。掛かるコストは、
ガス給湯暖房機購入 + |
:580,000円 |
古い給湯器の撤去と ガス給湯暖房機の新設工事費用 |
:4,6000円 |
合計 | :626,000円 |
なお、床暖房などの暖房設備設置と、暖房熱源機の間の温水の配管工事は別に見積もりを取る必要があります。床暖房の設置場所、設置方法によって大きく工事仕様が変わるためです。
③ 参考として、ガス給湯器を買い替え、暖房熱源機も購入して併設するケース
暖房熱源機はガスに限らず、石油、電気、ガスなどの機種がありますが、ここでは、ガスとして仮定します。
ガス給湯器購入費用 + |
:480,000円 | ガス給湯器切替工事費用 + |
:46,000円 | 暖房熱源機購入費用 + |
:290,000円 | 暖房熱源機設置と配管接続費用 + |
:35,000円 |
暖房熱源機設置までのガス配管 給水配管の設置費用 + |
:20,000円 |
合計 | :871,000円 |
なお、②と同様に床暖房などの暖房設備設置と、暖房熱源機の間の温水の配管工事は別に見積もりを取る必要があります。床暖房の設置場所、設置方法によって大きく工事仕様が変わるためです。
④ 暖房熱源機の種類ごとの比較
以上ではガス給湯器を中心に紹介してきましたが、ガス以外の暖房熱源機についてもご紹介します。
表2 熱源による暖房熱源機の種類比較
暖房熱源機 熱源による種類 | |||
燃料種類 | ガス(都市ガス、LPG) |
石油 | 電気(ヒートポンプ式) |
価格 |
290,000円 | 300,000円 | 400,000円 |
メリット | 立ち上がりが早く 暖房が強い |
立ち上がりが早く 暖房が強い |
燃料費が安い |
デメリット | 長期運転では 燃料費が高い |
オイルタンクの 設置場所が必要 |
投資価格が高い |
4.床暖房を温水タイプで敷設したときの方法と価格(参考)
図3に床暖房を設置したイメージ図を紹介します。床暖房は、温水ルームヒーター、温水パネルに置き換えても同じような配管系統となります。
床暖房を2階に設置したい場合は、配管を2階まで敷設することで、2階の床暖房が実現できます。
床暖房を行う方法には、次のような方法があります。
- 床に直接床暖房貼る方式
約6万円/畳、工事期間1日~2日 - 床を全面的に張り替える方式
約10万円/畳、工事期間3日~4日 - 床暖房を行うにはこれまでの各章でご紹介した、暖房熱源機が必要で、種類ごとにコストが異なります。
床暖房の方式には、電気ヒーター方式と、温水方式があります。
温水方式は、これまで各章でご紹介してきたことを参考として下さい。
電気ヒーター式の床暖房は、電気によって動く床暖房で、ヒーターの種類によって、PTCヒーター式と電熱線式があります。どちらも簡単な設置工事で出来上がりますが、電気を常に使うため電気料金が装荷する懸念があります。電気ヒーター式の場合、長い時間寝ていると、低温やけどになる危険があるため、その点では温水式が安全です。次の表に、電気式と温水式の床暖房の特徴を紹介します。
表3 電気式と温水式の床暖房比較
方式 | 電気ヒーター式 | 温水式 |
設置コスト |
設置コストが安い(電気ヒーターのみ) | 設置コストが高い(熱源機も含む) |
ランニングコスト | ランニングコストが高い | ランニングコストが安い |
安全性 | 低温やけどの危険があります | 危険要因はなく安全です |
起動時間 | 部屋の暖まり方が遅い | すぐに部屋が暖まる |
適用箇所 | 個室のような決められた空間に向いています | 広い部屋に向いています |
使用時間 | 使用時間が短い場所での使用に向いています | 長時間使う場所に向いています |
工事 | 設置工事が簡単に済む | 設置工事に手間が掛かる |
他にもメンテンス頻度や、不凍液の入れ替えなど多くの比較対象がありますが、それは10年以上使った時の注意事項で、長時間使う前提では、何が起こるか分かりません。
この表3の比較では、不確定要因の多い、長時間使用での比較はしていません。
まとめ
このコラムではガス給湯器を中心に、ガス給湯器の機能に暖房機能を加えることで、お湯だけではなく、部屋全体を温める方式についてご紹介してきました。以前から部屋の暖房のために暖房熱源機を入れて、暖房してきた人も多くいらっしゃることでしょう。
部屋の暖房という点では、どのような型式でも良いと思います。しかし、せっかく暖房するために、2台のガス器具を付けたり、石油などを使った熱源機で暖房するなどは、燃料のランニングコストを引き上げ、敷地内を狭くするなど、不都合な部分が見られます。
ガス給湯器の暖房付きの場合は、ガス給湯器単独のランニングコストは上がりますが、敷地内の見た目が良くなるなど決して不都合な点は見当たりません。
ただし、ガスを使っているため、ガスは外での使用であって、部屋内にガスが入ることはありませんが、ガス器具の定期的なメンテナンスをしっかりやっていれば、安心です。
床暖房で、電気式と温水式の比較をしましたが、家庭がオール電化としているので温水式は使えないということはありません。給湯器にもエコキュートのような電気給湯器があり、暖房用の温水も使えるため、温水式といってもオール電化は可能です。
色々な点を考えて、床暖房は温水式ヒーター式が良いということであれば、電気ヒーター式の床暖房は止めて、電気式の給湯暖房機を入れて、オール電化にすることもライフスタイルの一つです。
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