ガス給湯器-減圧弁と安全弁(逃し弁)

減圧弁や安全弁(逃し弁)について解説!
ガス給湯器を使ってお湯を沸かすことは、日常茶飯事になっています。
今月はガス代が高い、ガス漏れはないか、異常な音がしていないかなど、ガス給湯器に対して時々は関心を持ってみることがあります。

減圧弁や安全弁(逃し弁)といったガス給湯器の機器について、関心は普通はもたないでしょう。しかし、これらの機器は異常を起こすと給湯器に水が入らなくなったり、お湯の配管を壊したりとガス給湯器が動くかどうかという役目を持っているのです。

減圧弁や安全弁(逃し弁)が異常を起こすことは、取り換える時期が来るまで知らないこともあるかもしれませんが、一旦、異常になると修復するまで給湯器が使えないという場面も起こり得ます。
減圧弁や安全弁(逃し弁)についてある程度知っていると事象が起きても、あれかもしれないと想定することができ早い対応が可能で、ガス給湯器の回復も早くできます。

今回のコラムでは、なじみの薄い減圧弁や安全弁(逃し弁)について、簡単にご紹介します。

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1.ガス給湯器の構成

ガス給湯器の構成を、エコジョーズを代表としてご紹介しましょう。
図1では、エコジョーズが水からお湯を作る仕組みと、配管に設置される付属品、減圧弁と安全弁(逃し弁)を紹介します。

図1で水からお湯にする仕組みは、次のようになります。

  • 1) 空気とガスが入ってから点火されます。
  • 2) 次に仕切弁が開いて水が導入されます。
  • 3) 水の圧力は、減圧弁で設定された圧力にされてから次の工程に流れていきます。
  • 4) 圧力が調整された水は、まず一次熱交換器を通って加熱されます。
  • 5) 一次熱交換器を通った水(お湯)は、二次熱交換器で加熱され、設定された温度まで加熱されます。
  • 6) 必要な温度に達したお湯は、お湯用の配管から出て、風呂・蛇口・シャワーなどで使用されます。
  • 7) 熱交換器から腐食性ドレンが排出されるため、専用のドレン配管に設けた中和器で中和した後に、排水管に流されます。
  • 8) 安全弁(逃し弁)が作動して排出されるお湯もドレンラインに入ります。
    (機種や設置工事者によっては、安全弁(逃し弁)から排出されるドレンは、専用で配管を設ける場合もありますが、メーカーの設置標準によって工事されます。)

以上がエコジョーズの水からお湯になるまでの簡単な紹介ですが、図1に出てくる機器の説明がないと気づかれたことでしょう。図1の大きな赤丸で囲んだ機器です。 それが減圧弁と安全弁(逃し弁)の説明です。 そもそも何のためについているの?無かったら何が悪いの?などの疑問が出てきますので、次章でご紹介します。

なお、減圧弁や安全弁(逃し弁)は他の給湯器でも設置されます。設置位置や個数など、給湯器の種類と給湯器の特性によって異なりますが、設置の目的は皆同じです。

2.減圧弁の役割と仕組み

図2に示す図は、減圧弁の図です。ただし、イメージ化していますので、詳細な図ではありません。また、給湯器の種類(メーカーごと)でも使われる形状などが異なりますが、仕組みと役割は同じです。

(1)減圧弁の構造

  • 減圧弁は水の配管と接続できるようなねじ込みがされています。
  • 水の入口にはストレーナーが挿入されていて、ゴミや不純物を給湯器内に入れないようにしています。
  • ストレーナーの後には逆流防止弁が付いています。これは水が逆流したときに、水の元側に流れ込まないよう逆に流れないようにしています。
  • 減圧弁にはスプリングで押さえられたダイヤフラムが接続され、水が設定どおりに流れるようにコントロールします。
  • ダイヤフラムには流量プラグが接続され、その位置によって減圧弁を流れる流量が変化します。なお、流量が変化するということは、流体(水)の圧力が変わる事でもあります。
  • スプリングの力を変えれるように設定ノブが付いています。(ないものもあります)

(2)減圧弁の役割

  • 水道水の圧力は、0.15~0.74 MPaですが、メーカーは0.15~0.5 MPaでの使用を希望しています。
  • もし0.15 MPの圧力で使うとき、水道の圧力が0.74 MPaできたら、配管に影響(最悪では破損)します。
  • 入ってきた水道水の圧力を0.15 MPに維持する必要があります。同時に流れる流量も一定となるようにしないと、エコジョーズの効率に影響します。

その為、減圧弁の役割は、入ってくる水を設定された圧力に保つようにすることです。

(3)減圧弁の作動原理

減圧弁がどのようにして圧力を一定にするかについて簡単にご紹介します。
圧力を一定にする仕組み
  1. 水道水は決められた流路を入口から出口に流れていきます。
  2. 水道水の圧力は、上部で押さえらえているダイヤフラムで圧力が上がらないようにしています。水道水の圧力が上がっても、ダイヤフラムを押し付けるスプリングの力によって、流量を増やすことなくダイヤフラムでコントロールされます。
  3. 水の圧力が下がると、上から押しつけていたダイヤフラムは上部に動きます。なぜなら水の圧力がスプリングで設定した圧力より強くなるからです。
  4. ダイヤフラムが上下に移動することで、水の流入量を増減することができ、結果、配管出口の水の圧力を上げたり下げたりできます。

このようにして、給湯器に入ってくる水の圧力が、コントロールされているわけです。

3.安全弁(逃し弁)の役割と仕組み

図3に示す図は、安全弁(逃し弁)の図です。 ただし、イメージ化していますので、詳細な図ではありません。また、安全弁の種類もメーカーごとでも形状などが異なります。しかし、仕組みと役割は同じです。
なお、安全弁は逃し弁とも言われ、同じものです。このコラムでは、これまで()付きで逃し弁を付記していますが、今後は安全弁の言葉で統一します。

なお、図3では安全弁のイメージを描いていますが、右側と左側の2種類があります。 左側は通常の設置状態のイメージ図で、右側は安全が作動したイメージ図です。

(1)安全弁(逃し弁)の構造

  • 安全弁の入口部は配管とネジ込みで接続できるようにネジが切ってあります。
  • 安全弁の入口は、シートとディスクでシールされています。
  • シートはスプリング接続の押えによって、抑えられています。その為、安全弁の入口に入ってくるお湯は安全弁の中には入れません。

(2)の安全弁の役割でご説明しますが、図3の右側のように、お湯の圧力が上昇するとシートが上方に移動し、シートとプラグの密閉性が弱くなり、お湯が安全弁内部に入ってきて、ドレンラインに流れ出します。

(2) 安全弁(逃し弁)の役割

安全弁は、一次熱交換器を通ったお湯の配管に設置されます。
水は熱が加えられて熱くなると膨張します。お湯の配管は膨張すると通常の圧力より高くなります。配管の許容できる圧力より高くなると、配管が変形したり破損する可能性が有ります。配管が破損すると非常に危険ですから、高くなった圧力を下げる必要があります。 圧力を下げる役目の機器が、安全弁です。

(3) 安全弁(逃し弁)の作動原理

通常、安全弁のシートはスプリングの力によって、ディスクに押し付けられています。
その為、配管の中のお湯は、安全弁の外に出ることはありません。
何らかの原因でバーナーからの熱量が増えて、お湯の配管の圧力が上昇したとします。
お湯の圧力が上がったことで、ディスクに押し込んでいたシートの抑える力が弱くなります(スプリングで押し込む力よりお湯の圧力の力が勝ったということと言えます)。
シートが通常の位置より上側に動くために、お湯が安全弁のシートとプラグの間から流れ出します。
流れる量はお湯の配管の圧力の上がる大きさに比例して多くなります。
バーナーからの熱量が上がった要因が治まって、配管の圧力が下がったとします。
通常の状態と同じようにシートがディスクを押し付ける力が戻るため、安全弁から漏れるお湯の流れは止まります。
配管の圧力が通常の状態に戻ったことで、安全弁も通常の状態に戻ったことになります。

4.機器の故障

減圧弁も安全弁も長く使い続けていると、故障が起こります。設置環境によりますが、腐蝕なども起こります。2章、3章でご紹介したように、機器にはそれぞれの役割があり、故障すると機能を発揮することができず、お湯が出ない、水がすぐ止まってしまうなどの不具合が生じます。 この章では、減圧弁と安全弁の故障モードと、その原因と対策を表にまとめてご紹介します。

(1) 減圧弁

表1 減圧弁に関わる故障
故障現象 原因 対策 備考
水が流れない ストレーナーが詰まっている ストレーナーの清掃か、取替  
圧力が上がらない 減圧弁内部機構の部品不良(特にシートの劣化) 減圧弁の取替 シートのみ変えれば良い場合もありますが、減圧弁交換の方が安くできます。
腐食がある 周囲の環境から不純物が水と混じった 清掃、年月が経っている減圧弁なら取替 給湯器内部にある場合は確認できない
減圧弁不良によって安全弁が作動する 圧弁が内部故障によって、高い水圧に対して調整できない。高い圧力で給湯配管に流れるため、安全弁が作動する。 減圧弁の取替 原因が減圧弁と特定できれば、減圧弁の取替だけでよい。 安全弁の不良も考えられるため、安全弁も一緒に交換した方が安心です。

(2) 安全弁(逃し弁)

表2 安全弁に関わる故障
故障現象 原因 対策 備考
圧力が上がっていないのにドレンラインからお湯が漏れる。 シートとディスクが劣化し、お湯をシールできない。 安全弁の取替 大きなサイズの安全弁の場合は、シートとディスク補修で済みますが、コスト的に取替がベストです。
お湯の温度が高いのに安全弁が作動しない。 スプリングが固着して動かない。 安全弁の取替 スプリングを交換し調整するコストの方が高くなります。
圧力が下がってもドレンラインから、わずかだが流れ続ける。 シートとディスクが劣化し、一度作動するとシール性を保てない。 安全弁の取替  
腐食がある。 周囲の環境から不純物が水と混じったと思われます。 表面だけでなく内部の腐食も考えられ、安全弁としての機能が果たせないため、取替。 給湯器内部にある場合は確認できません。
* 減圧弁・安全弁の取替費用は、部品代5,000円、作業・調整費用など15,000円ほどでトータル20,000円を目安として下さい。(給湯器の機種によって価格が異なります。)

5.機器を故障させないために普段やっておくこと、異常が起きた時にやっておくこと

  1. 圧力が上がらない、異常な圧力になっている場合は、一次的に使用を停止して状況を確認します。
  2. 減圧弁のストレーナーにゴミが付着していないかを確認します。
  3. 給湯器内部に設置されている減圧弁や安全弁は、給湯器の外側パネルを開放しないと状況が分からないため給湯器サービス会社に連絡しましょう。
  4. 給湯器の配管などに腐食が見られたときは、減圧弁や安全弁も腐食されている可能性が有りますので、直接見える場所に減圧弁や安全弁が無ければ給湯器サービス会社に連絡し、点検を依頼します。
  5. 点検結果、清掃などで終わる場合は、清掃と漏れなどが無いかなどを点検してもらいます。
  6. 点検結果、取り換えた方が良い場合は、減圧弁も安全弁も同じ条件にあるため両方とも交換した方が良いでしょう。

まとめ

給湯器に付属する減圧弁や安全弁は、いつも頻繁に動く部品ではないため作動不良となる事はめったにありません。
ただし、腐蝕などを起こすと部品が正常に動作しなくなる可能性があります。

減圧弁や安全弁が一旦作動不良を起こすと、配管破損などの大きな故障の原因になります。 減圧弁や安全弁は給湯器のユーザーが簡単に点検できる部品ではないため、減圧弁の状況や安全弁が作動しているかなどを確認することまでできれば補修が早く終わります。 減圧弁の状況や安全弁が作動しているかなどを確認ができなくとも、給湯器の水やお湯の回りで異常があることが分かれば、サービス会社に連絡することで素早い対応が可能です。 その際には、給湯器のメーカー・型式・取付け方法など、仕様書に書いてあることをサービス会社に伝えることが修復を早く終えるためにも大切なことです。

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