賃貸ガス給湯器について解説!
賃貸ガス給湯器という言葉から連想するものは、戸建て賃貸住宅、賃貸アパートや賃貸マンションに設置しているガス給湯器でしょう。
なぜガス給湯器?という疑問があると思います。
給湯器にはエコキュートのような電気式、エコフィールのような石油式、そしてエコジョーズに代表されるガス給湯器があります。
エコキュートやエコフィールは設置場所を選ばないと据えられないため、設置場所に周囲の環境を選ばない、ガス給湯器エコジョーズが設置される場合が多いようです。もちろん、全室エコキュートを備えたオール電化の賃貸住宅があってもおかしくありませんが。
のコラムでは、賃貸戸建て住宅や、賃貸アパート・マンション(このコラムでは賃貸住宅と総称します)に、ガス給湯器を設置するときの対応について紹介しましょう。
1.ガス給湯器機器構成
図1は、賃貸アパートや賃貸マンションにおいて、ガス給湯器が部屋ごとに設置されている様子を紹介しています。
部屋ごとにガスメーターが設置されて、部屋ごとに使用したガス量が測られて、月々の支払いとなります。
2.賃貸ガス給湯器周りの機器構成
(1) 機器構成
図2では、部屋ごとに設置されたガス給湯器の機器構成を紹介しています。
給湯器は暖房機能まである製品が人気となり始めていますが、図2ではガスはお湯用と台所用とで使用している構成図を紹介しています。
ガスコンロもありますが、IHクッキングも最近は人気が出ています。しかし、今回はお湯の使い方だけの機器構成としています。
ガス給湯器は、リモコン2台の間で自由に設定ができ、またエラーがあればリモコンに表示されます。
バスタブと給湯器が接続され、フルオート機能が働きます。給湯器は、ガス配管、給水配管、お湯の配管、電気配線と接続され、リモコンでお湯を沸かします。
(2) ガスの種類
ガス給湯器に使えるガスは、プロパンガスか都市ガスの2つしかありません。
都市ガスが近くまで来ていれば、ガスの種類は2つのどちらでも自由に選べます。
しかし、賃貸住宅にガスを供給する時に、2つのガスを希望者ごとに振り分けることは、無駄が多く賃貸住宅のコストが掛かるだけで、大家さんは安く納入できるガスを選ぶでしょう。
したがって、賃貸住宅に大家さんが用意する給湯器も、選んだガスの種類に合ったガス給湯器や配管類となります。
(3) プロパンガスを使った構成
図3では、ガスの種類にプロパンガスを使った場合のガスの系統図を紹介しています。
図3では、プロパンガス建屋を作ってガスを収納したイメージを紹介しています。
プロパンガスは、賃貸アパートやマンションの集合住宅の場合、部屋の個数や使用するガスの量に応じてボンベの数が決まり、一ヶ所に置いてあることが多いです。
保安上安全で、管理費の掛からない管理方式で設置されます。
(4) 都市ガスを使った構成
図4は、ガスの種類に都市ガスを使った場合のガスの系統図を紹介しています。
都市ガスの本管が近くの道路の下を通っているのであれば、本管から枝管を出して、枝管からガスメーターまでと、ガスメーターから給湯器までのガス配管を敷設し接続します。
これは、賃貸の部屋の数だけ同じシステムが構築されます。
都市ガスによる給湯設備で困るのは、都市ガスの本管が1km先にまでしか来ていない場合です。そうすると、そこから建物までガス管を敷設することになりますが、道路の掘削工事が必要になり相当のコストが掛かります。
もし、賃貸住宅が200世帯くらいあって、全住宅に都市ガスを引くとなると都市ガス会社の方から、都市ガス本管を建物近くまで延長工事を行う可能性があります。
つまり、掛けるコストに対して利益が勝るという判断があれば延長も可能だということです。
このコラムでは、都市ガスの延長は不可能で、大家さん側がプロパンガスを設置する方が、掛けるコストがより安くできるという判断から、プロパンガスによる給湯設備の設置という前提とします。
3.賃貸住宅で暮らす人に掛かるプロパンガス給湯器に関するコスト
(1) ガス給湯器のランニングコスト
賃貸住宅で暮らす人に掛かるプロパンガス給湯器のコストはランニングコストだけです。
毎日お風呂に入るとして、ランニングコストがどれだけ掛かるか試算してみましょう。
東京の平均水温を17℃とし、お湯は42℃で使うとし、1日に家族3人が560ℓのお湯を使うとします。(ガスはコンロなども使いますが、試算は給湯器に係るコストのみとします)。なお、お湯の使用量は、下の表1を参考としています。
表1 家族数とお湯の使用量例
家族数 |
使用目安量 | 合計量 | ||||
お風呂 (42℃) |
シャワー(42℃) 80L/1人 |
洗面・台所 (42℃) |
||||
3~4人 |
1回 | 200L | 4回 | 320L | 160L | 680L |
2~3人 | 1回 | 200L | 3回 | 240L | 120L | 560L |
沸かすお湯の量560ℓでの熱量は以下となります。
(42℃-17℃)×560=14,000 kcal
プロパンガスの熱量は24,000kcal/1m3なので、
14,000÷24,000=0.583
お湯560ℓ作るのに、約0.58m3のプロパンガス量が必要です。
ガス給湯器の効率は約80%ですので、実際は、
0.58÷0.80=0.73 m3 のガスが使われます。
プロパンガスの単価を、東京の平均価格450円/m3とすると、1ヶ月のガス代は、
0.73×450円×30日=9,855円/月です。
なお、エコジョーズを使うと効率が0.95まで上がるので、1ヶ月の料金は、約8,200円/月になり、約1,700円/月お得です。
(2) メンテナンス費用
賃貸住宅で暮らす人は、ガス給湯器の定期検査・点検は大家さん側が定期に行いますが、修理が必要な場合には、2つのパターンがあります。
- 簡単な修理・交換など全て大家さん側が負担する場合
- 簡単な修理費用は入居者が負担、交換など複雑な工事は大家さんが負担
ただし、簡単な故障でも何度も続くようであれば、給湯器自体に問題があり交換や大規模修理が必要になるため、大家さん負担で改善してもらいましょう。
どのようなメンテナンスのパターンになるかは、入居時の契約書に記されていますので、注意して見ておく必要があります。
以下では、大家さんが全てメンテナンスを負担するケースについて紹介します。
ガス給湯器は安全にガスを使うために、定期検査や異常時の対応などメンテナンスが必要です。もし配管に傷があって修理しても、大家さんが負担します。
メンテナンスの費用は全てガス給湯器の所有者(大家さん)が行い、機器取替えのような大きなコストが発生したときも、所有者(大家さん)が全て負担します。
- 通常は給湯器を含め、賃貸関係にある全てを管理会社に委託しているため、賃貸に住む人が相手する先は管理会社になります。
- 給湯器を使用している人は入居者ですので、入居者は給湯器を使って異常に気付いたときは、管理会社への連絡を行う義務を負っています。
- 異常に気付いてそのまま連絡もせず放置しておき、それが原因で給湯器一式を交換することになったときには、賃貸の住民に費用負担が生じる場合があります。
その理由は、異常に気付きながら連絡せずに給湯器の故障が生じ、その補修に大きな費用が掛かったのは、住民が連絡を怠ったからという理由からです。
そのため、費用負担を求められたときは、交渉する必要があるかもしれません。
以上のことは、住宅の賃貸契約で取り決められますので契約時の注意が必要です。
入居者は、ガス給湯器に少しでも異常があったときは直ちに管理会社へ連絡し、正常になるように点検・補修を無料で行ってもらうことができます。
給湯器の異常が重なり給湯器の取替が必要なときは、直ちに取替を要求することができ、管理会社はガス給湯器の取替をガス会社に指示する必要があります。
給湯器の点検・補修・取替に掛かるコストは全て管理会社側(大家さん)の負担です。
4.賃貸大家さんに掛かるプロパンガス給湯器に関するコスト
(1) ガス給湯器を設置するときに掛かる工事費用
図3のようにプロパンガスボンベを一ヶ所に集め、賃貸全室にガスが行くようにガス配管とガスメーターを設置し、ガス給湯器の設置と配管工事を行うのも必要な経費は全て大家さん持ちです。
ガスメーター設置から給湯器設置、配管敷設と配管工事1式の費用に50万円掛かるとすると、戸建てであれば50万で済みますが、集合住宅で10部屋あれば、全室分として500万円程度かかることになります。
給湯器設置は賃貸アパートなどの内装や外装、設置設備費用の中の一つで、賃貸料もそれを見込んだ金額で計算されていると思いますが、家賃の相場をむやみに上げては入居する人がいなくなり、大家さんに跳ね返ってくるため、給湯器に掛かるコストをどうするかは、大家さんにとって難しい選択になるでしょう。
(2) ガス給湯器を補修や交換するときに掛かる工事費用
アパートに納めたガス器具・配管の検査をどうするかは、大家さんとガス会社間で初めに取り決めます。
ガス給湯器が5年ごとに5万円程度の部品交換を伴う故障をしたとすると、賃貸住宅1部屋分として、10年間では10万円と概算できます。10部屋あれば10年間で100万円の出費です。
ガス給湯器の故障が多いと判断したときは、何度も故障を修復することより、ガス給湯器1式を取り換えた方が全体的に掛けるコストが安く済む可能性があります。
また、故障が重なると給湯器が使えないことと同じになるため、取替も含め根本的な対策を大家さんに要求できます。掛かる費用は大家さんが持つことになりますから、ガス給湯器を修理するか新しいものと取り替えるかは、コスト比較して大家さんが判断します。
1台の給湯器の故障の修理代は、約3万円とすると、故障が5回起これば15万掛かります。これだけ故障が続くと、この先も定期に故障が出ると思われます。
給湯器の取替を行うと1式20~30万円くらいです。
故障のたびに連絡や検収運転など手間が多いため、取替の方が有利と大家さんは考えるでしょう。
(3) ガス給湯器が寿命になったときの機器交換
ガス給湯器の寿命は10年~15年と言われています。
部品の確保などから、10年ごとに取り換えるのが故障対応などの手間が減るため、10年と決めて取り換える方が大家さん側としては効率的でしょう。
取替のコストは10部屋分を一気に取り換えるとなると、25万円×10=250万円掛かり、大家さんは250万円を用意しなければなりません。
もし20部屋ある賃貸マンションとなると、500万円必要で大家さんには、給湯器の取替費用はかなりの負担です。
しかも、取替をしたからと言って入居者側からお金を徴収することはできないため、全て大家さんの出費になります。
しかし、大家さんには奥の手があります。
ガス給湯器の取替1式をプロパンガス会社に無料でやらせることです。
ガス会社が応じなければガス会社を別の会社に変えるという、一種脅しが効きます。
ガス会社としても、定期的に交換する計画と、まとまったガス代金が毎月入ってくるため、大家さんの申し出を断る理由はないでしょう。
5.賃貸住宅のガス給湯器の異常時の対応
ガス給湯器に異常があったときの対応はどうするか整理しておきましょう。
給湯器の設置を自分が行った時は、給湯器の異常は全て直接ガス会社へ連絡し対応してもらいます。
賃貸の場合は、給湯器の設置は大家さんが全て行い、入居者はただ使わせてもらっている立場の違いがあります。
この2つの大きな違いは、給湯器の所有権があるか無いかという違いです。
(1) ガス配管やガス給湯器からガス漏れの臭いがする
賃貸の管理会社へ連絡し、管理会社からガス会社の検査員を至急派遣してもらう。
誤ってはいけないことは、入居者から直接ガス会社へ連絡し、対応してもらうことです。
初めの対応でトラブルが大きくなり、大きな処理費用が発生したときに、請求が入居者に請求される可能性があるためです。
(2) ガス給湯器から異音・異臭がする
ガス給湯器から異音などいつもと違う状況を感じたときも、(1)と同様の処置を取ります。状況の説明は、管理会社は初めに連絡を受けますが、詳しい話は管理会社の許可を受けて、ガス会社へ説明します。
ただし、処置方針がガス会社側で決まったら、ガス会社の処置については、管理会社と協議してもらいます。
入居者が何かすることがあれば、管理会社を通して協議します。
(3) 異常エラー表示などの対応
マイコンメーターやリモコンに給湯器のエラー表示が出てきたときは、管理会社へ連絡してガス会社が点検に来るようにしてもらいます。
エラーの理由や注意点などが分かれば、管理会社が説明するか、管理会社を間に入れてガス会社から説明を受けます。
(4) 異常エラーが継続し、取替を検討する必要があると感じた時
異常エラーの対応は(3)と同じように対応してもらいますが、エラーが続いてお風呂にもゆっくり入れないため、取替を要求します。
直接大家さんと話し合うということを管理会社へ伝えて、大家さんへ取替要求をします。
大家さんも状況とガス会社の報告から、取り換えるしかないと判断し取替に動くでしょう。
このときの交渉に管理会社を入れても、管理会社は大家さんと入居者の連絡係でしかないので、直接大家さんと掛け合った方がスピーディーに運びます。
(5) 入居者の緊急時の対応
ガスの異常があれば緊急避難も必要なことも想定されます。
ガスの異常時には、基本としては管理会社と連絡し、その指示に応じて対応します。
緊急時は、ガス会社の人と直接話をして対応しないと手遅れになる可能性もあります。
人道的な観点からは、ガス会社の人と直接話をしますが、設備を変えるなどお金が絡むような事案に対しては、ガス会社に指示も許可も出してはいけません。
そのような場合は必ず管理会社が間に入って決めることが規則です。
しかし、緊急時には管理会社に連絡をして……、のような規則を守っていては、被害を避けられずに、さらに大きくしてしまう可能性があります。
ガス会社がどう対処していくら掛かろうと、被害が食い止められればそれが一番です。
まとめ
このコラムでは、賃貸-ガス給湯器というキーワードをもとに、賃貸戸建て住宅、賃貸アパート・賃貸マンションなどの賃貸物件と、賃貸を受ける入居者側について紹介してきました。
賃貸物件にガス給湯器がすでに設置されていれば、入居者はただそれを使い不具合が生じれば、大家さんに連絡して直してもらうという簡単な関係です。
ただそれも普通の状態であれば何も問題はないのですが、故障や異常などの普通と違った状態が現れて、そこにコストが絡んでくると色々な問題が生じてきます。
大家さん側はお金を出したくないけれど、入居者側は給湯器を普通の状態にしてすぐ使えるようにして欲しいという、相反する問題が表面化するからです。
緊急時には、直接ガス会社と連絡し合って対応するということを、賃貸に入居する前に大家さんと取り決めて、その時掛かったコストは全額大家さんが負担するという契約内容にしておけば、良いのではないでしょうか。
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