プロパンガスを使用する上では、次のことを知って使用すると、安心することができます。
- プロパンガスとはどんなガスか?
- どのように使えば安全で、危険をなくすために何をすればよいか?
また、プロパンガスが、過去にどのようなトラブルを起こしたかを知って、それを避けるような使い方をすれば、安心してプロパンガスを使用することができます。 もう一つ、安心して使うには、プロパンガスを安全・安心できる仕組みが、どのようになっているかを理解することです。
このコラムでは、プロパンガスの保安がどのような仕組みで安全を担保しているかと、普段使っているガスコンロや給湯器などのガス器具の安全対策がどうなっているかについてご紹介します。
プロパンガスの保安業務とは
(1)プロパンガスの供給設備と消費設備
図1では、プロパンガスが販売事業者からボンベで供給され、一般家庭の給湯器やコンロで使われるまでの系統を紹介します。
供給設備
一例として、販売事業者がボンベ、ガス調整器、ガスメーターまで、配管・継手類を含み、設置する設備です。 供給設備の管理責任は、販売事業者です。
消費設備
ガスメーター以降の給湯器やガスコンロまでの設備で、配管・継手まで含みます。 消費設備の管理責任は、消費者です。
(2)法定点検・定期点検
プロパンガス設備の安全を守るために、保安業務が行われます。
この保安業務は、供給設備と消費設備では、同じ保安点検でも、形態が異なります。
図2では、この形態の違いを紹介します。
供給設備の保安
供給設備の維持管理の責任者は販売事業者です。
販売事業者は、設備の点検について、保安機関に委託します。
委託を受けた保安機関は、供給設備の点検を行い、結果を販売事業者に報告します。
報告を受けた販売事業者は、必要な修理や改善を行い、設備の維持管理を行います。
消費設備の保安
消費設備の維持管理の責任者は消費者です。
消費設備を保安機関が点検する場合、調査と言いますが、実質的には点検です。
販売事業者は、消費備の調査について、保安機関に委託します。
委託を受けた保安機関は、消費設備の調査を行い、結果を販売事業者に報告します。
報告を受けた販売事業者は、必要な修理や改善を消費者に打診します。
消費者は、それを受けて設備の修繕・改善を行います。
プロパンガスの保安業務には、点検・調査に関する保安業務と、消費者に保安情報を知らせる周知、緊急時の保安業務があります。
①点検・調査に関する保安業務
- 供給開始時の点検・調査
プロパンガス設備が設置され、運用を開始する前の点検です。
- 容器交換時の供給設備点検
ボンベ容器の交換時、または月に1回行う供給設備の点検です。
- 定期供給設備の点検
1年ごと、または4年ごとに行う供給設備の点検です。
- 定期消費設備の調査
1年ごと、または4年ごとに行う消費設備の点検です。
②周知に関する保安業務
消費者に、プロパンガスやガス設備について知ってもらう必要があることを、説明する活動です。
- 使用する燃焼器のLPガスに対する適応性
- 消費設備の管理・点検の注意事項
- 燃焼器を使用する環境と換気について
- 消費設備変更時に販売事業者へ連絡すること
- ガス漏れや災害について、消費者が取るべき緊急処置や連絡事項
- プロパンガス災害発生の防止について
③緊急時の保安業務
緊急時連絡と緊急時対応は、LPガス災害発生時、または恐れがあることを、消費者から連絡を受けたときに、すみやかにその措置を講ずる業務です。
- 緊急時連絡
・緊急情報の受信
・適切な助言と指示
・必要に応じて緊急時対応を行う保安機関への出動要請
・集中監視システムによりセンター遮断を行う
- 緊急時対応
・緊急時連絡を行うこと ・災害発生防止、災害拡大防止のための出動して必要な措置を取る
(3)プロパンガス保安業務
供給設備と消費設備の保安業務について、具体的にどのようなことを行うかについて、表1、表2で紹介します。
①供給設備
表1では、貯蔵能力1トン未満の供給設備についての、保安業務の内容と点検周期を、紹介します。
表1 貯蔵能力1トン未満の供給設備
点検項目 | 供給開始時 | 容器交換時 | 月1回 | 定期供給設備点検 | |
1年に1回 | 4年に1回 | ||||
設置場所 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
火気までの距離 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
充填容器の腐食防止 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
充填容器の温度上昇防止 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
充填容器の転落・転倒防止 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
バルブ等の損傷防止 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
バルブ・集合装置・供給管・ガス栓の欠陥 (容器から調整器まで) | ◎ | ◎ | ◎ | ||
調整器の欠陥及び液化石油ガスの適合性 | ◎ | ◎ | ◎ | ||
地下室等に係る供給管の漏えい試験 | ◎ | ◎ | |||
白ガス管等の埋設管漏えい試験 | ◎ | ◎ | |||
地下室等に係る供給管の緊急遮断装置 (300kg以上の貯蔵設備) | ◎ | ◎ | |||
バルブ・集合装置・供給管・ガス栓の欠陥 (調整器からガスメーターまで) | ◎ | ◎ | |||
バルブ・集合装置・供給管・配管の腐食防止 | ◎ | ◎ | |||
バルブ・集合装置・気化装置・供給管・配管の漏えい試験 | ◎ | ◎ | |||
燃焼器の入口圧力 | ◎ | ◎ | |||
危険標識 | ◎ | ◎ | |||
調整器の調整圧力・閉塞圧力 | ◎ | ◎ |
* なお、表1では、認定事業者による点検周期については省略しています。
販売事業者が認定事業者の資格を取ると、点検の周期が、5年に1回、10年に1回のように大幅に緩和されます。
②消費設備
表2では、体積販売する場合の消費設備について、保安業務の内容と調査周期を、紹介します。
表2 消費設備(体積販売)
点検項目 | 供給開始時 | 容器交換時 | 月1回 | 定期供給設備点検 | |
1年に1回 | 4年に1回 | ||||
地下室等に係る配管の漏えい試験 | ◎ | ◎ | |||
白ガス管等の埋設管漏えい試験 | ◎ | ◎ | |||
地下室等に係る末端のガス栓と燃焼器の接続方法 | ◎ | ◎ | |||
配管・ガス栓・末端ガス栓と燃焼器間の管の欠陥 | ◎ | ◎ | |||
配管の腐食防止 | ◎ | ◎ | |||
配管の漏えい試験 | ◎ | ◎ | |||
燃焼器の入口圧力 | ◎ | ◎ | |||
気化装置の手動復帰式自動ガス遮断装置 | ◎ | ◎ | |||
末端ガス栓と燃焼器の接続方法 | ◎ | ◎ | |||
予備ガス栓の取り扱い | ◎ | ◎ | |||
燃焼器の適合性 | ◎ | ◎ | |||
警報器 | ◎ | ◎ | |||
開放式湯沸し器の給排気 | ◎ | ◎ | |||
半密閉式燃焼器の給排気 | ◎ | ◎ | |||
燃焼器の入口圧力 | ◎ | ◎ | |||
密閉式燃焼器の給排気 | ◎ | ◎ | |||
燃焼器具の製造者・輸入者の名称・型式・製造年月 | ◎ | ◎ |
* 消費設備の保安業務では、他に重量販売するケースがあります。
2.プロパンガス器具の安全とは
プロパンガスの安全の確保は、ガス販売事業者が行う保安点検・検査だけではありません。
消費者が普段使うガス器具にも、安全を確保する機能が多く、基本的な取り扱い方を誤らなければ、ガス器具は安全・安心であり、便利です。
この章では、マイコンメーター、ガスコンロ、ガス給湯器の安全について、ご紹介します。
(1)マイコンメーターの安全動作
図では、2019年に宅地関係で起きた、プロパンガス漏えい事故90件の内訳を紹介します。①マイコンメーターの機能
マイコンメーターは、ガスの使用量を量る計量器です。
マイコンメーターの構造のイメージを、図4で紹介します。
マイコンメーターには、ガスの入口に遮断弁があり、次のようなセンサーで異常を検知すると、ガスを遮断します。
- 流量センサー
- 圧力検知器
- 地震検知器
②マイコンメーターの表示
マイコンメーターは、センサーで異常を検知したときに、ガス供給停止(遮断弁閉止)、または警報を発生します。
もしガスが停止した、地震があったときなどに、マイコンメーターの表示を見れば、何が起きているかが分かります。さらに、その表示内容を販売事業者に連絡すれば、速やかに修復が可能となります。
図5では、マイコンメーターのエラー表示について、ご紹介します。
③ガス供給停止エラー表示
図5の、①~④のようなエラー表示をして、遮断弁を閉止します。
- ① ガスの流量増加異常
ゴム管が外れた、ガス栓の誤開放、ガス器具を同時に多数使用した、などが原因です。 - ② ガスの継続長時間使用
ガス器具の消し忘れ、同一器具の長時間使用などが原因です。 - ③ 地震計作動・ガス漏れ警報作動・CO警報器作動
ガス使用中に震度5以上の地震が発生した場合です。
④警報エラー表示
図5の、⑤~⑧のようなエラー表示をします。
- ⑤ ガス微小流量漏えい
メーターの下流で、微小なガス漏れが発生している場合です。 - ⑥ 電池電圧低下
メーターの電池電圧が低下していることが原因です。 - ⑦ 圧力微小漏れ低下
メーターの上流か下流で、微小なガス漏れが発生していることが原因です。 - ⑧ 調整圧力異常
調整器に異常があることが原因です。
(2)ガスコンロの安全動作
図6では、ガスコンロのバーナーの安全装置について紹介します。
Siセンサーコンロは、法律で設置が義務付けされている安全機能と、他の安全機能、便利機能を持ち、安全性が向上したガスコンロです。
- 調理油過熱防止装置
揚げ物をしたときに鍋の空焚きや、鍋底の異常な加熱をセンサーで検知して、自動消火する機能です。 - 立ち消え安全装置
煮こぼれ、風によって火が消えたとき、炎の熱を検知して、自動的にガスを停止する機能です。 - コンロ・グリルの消し忘れ消火機能
一定時間経過すると、消し忘れ防止のため、自動消火する機能です。 - 早切れ防止機能
なべ底が250℃以上になっても自動消火せず、強火と弱火を繰り返して火力を調整する機能です。 - 油温度調整機能
強火と弱火を繰り返して適温に維持する機能です。
ガスコンロの安全と便利さについて紹介してきましたが、この機能は新しいガスコンロに使われている機能です。2008年以降のガスコンロに標準装備されているため、旧型式のガスコンロにはこれらの安全機能は装備されていません。
ガスコンロの寿命は10年と言われています。もし旧い型式のコンロを使っていれば、10年以上は経過していると思われます。安全を買うという考えで、買い替えを検討しても良い時期ではないでしょうか。
(3)給湯器の安全動作
給湯器の事故事例に、点火しないため数度点火を繰り返したところ、点火ミスで溜まったガスに引火して火炎が出たという事例があります。これは、旧型式の給湯器で安全装置がなかったという事例です。
以下では、給湯器の安全装置についてご紹介します。
- 不完全燃焼防止装置
ガス給湯器内の温度を2か所で測定し、2か所の温度差が変化することで、不完全燃焼を検知し、ガスの供給を遮断し、給湯器を停止する機能です。 - 立ち消え安全装置
何らかの原因で、ガスの供給が停止して火が消えたときに、ガスの供給を遮断し、給湯器を停止する機能です。 - 空焚き安全装置
浴槽にお湯がない状態で空焚きしたときに、火災が起きないように給湯器を停止させる機能です。 - 過熱防止装置
空焚きなどで熱交換器や給湯器の温度が上昇したときに、ガスの供給を遮断し、給湯器を停止させる機能です。 - 過電流防止装置
点火できる正常な電流が流れているかチェックし、過電流が流れているときに、自動的に電源を切り、給湯器を停止させる機能です。 - 凍結防止装置
凍結を防ぐため、外気温が設定以下になると、ヒーターを作動させて、自動ポンプ運転を行い、機器内を保温する機能です。 - 停電時安全装置
給湯器が燃焼中に停電すると、温度管理ができないまま加熱されるため、停電を検知すると自動でガスをとめる機能です。また、再通電しても点火しません。
3.プロパンガス集中監視システム
(1)プロパンガス集中監視システムとは
図7は、プロパンガス集中監視システムの系統図です。
プロパンガス集中監視システムは、消費者宅に設置しているマイコンメーターと、集中監視センターの間を、無線や電話回線で接続し、プロパンガスの利用状況を監視するシステムです。
2-(1)-②で紹介したマイコンメーターの警報表示などは、異常を検知すると、その表示された情報が集中センターに入ります。 集中センターでは、状況を確認し、消費者と連絡を取ったうえで、必要であれば保安機関に出動要請して、適切な対応を図ります。
(2) 集中監視システムの機能
集中監視システム構成機器は、次のような機能を有します。
- マイコンメーター
ガス給湯器内の温度を2か所で測定し、2か所の温度差が変化することで、不完全燃焼を検知し、ガスの供給を遮断し、給湯器を停止する機能です。 - 立ち消え安全装置
・保安情報の発信
・残量管理情報の発信
・検針値積算 - 集中監視センター
・保安情報の常時監視
・残量管理情報からの後処理
・積算値の読み取り
・保安情報の後処理
・検針データの後処理
・マイコンメーターへの遠隔遮断
(3)集中監視システムのメリット
- a. ガス消費者の安全確保
・消費者のプロパンガスの利用状況を見守り、重大事故を未然に防止できる。
・ガス器具消し忘れ・ガス漏れ発生時に、遠隔でガスを遮断できる。 - b. 警報器連動遮断
・ガス警報器・CO警報器からの異常を感知し、自動的にガスを遮断できる。 - c. ガス切れ防止・配送の効率化
・消費者の残ガス量をチェックし、消費者の急激な使用量増加があっても、ガス切れ前にボンベ交換ができる。
・配送作業のムダが削減できる。 - d. 検針・請求の効率化
・定期に検針でき、請求日を一定化できる。
・検針の自動化で正確な使用量を得、業務の効率化に貢献できる。 - e. 付加サービスの提供
・異常の詳細データがセンターに通報され、きめ細かいサービスを消費者に提供できる。
・ガスの使用量を見える化できる。
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